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婚外子の遺産分割をどうすればいいか?

解決人●渥美雅子
イラスト●小田切ヒサヒト
発行:2014年3月
更新:2014年6月

  

父が6年前膵がんで亡くなりました。その後、遺産相続に関してはなにもしていません。土地家屋も父の名義のままです。母も高齢になり、兄弟3人が集まった7 回忌できちっとしておいたほうがいいという話になりました。実は父には認知をした子供がいますが、私たちとは没交渉です。母も知っていたと思いますが今は認知症で、そのことに私たちもふれたくありません。しかし最近、最高裁で婚外子でも同じように相続しなければならないという判例が出たので、どのようにすればいいのか困っています。やはり、その婚外子の分も考えないといけないでしょうか。

(57歳 女性 神奈川県)

改正前でも婚外子にも平等に相続させましょう

あつみ まさこ 弁護士として家族問題、遺産相続などを専門に活躍。03年「女性と仕事の未来館」館長を務める。05年男女共同参画社会作り功労者内閣総理大臣表彰を受賞。『子宮癌のおかげです』など著書多数

2013 年9 月4 日最高裁は「婚外子相続格差は違憲である」という決定を出しました。

これは前々から国連の人権委員会などより差別是正の勧告を受けていたものの、今迄立法府が一向に動こうとしなかった問題に司法が大きな一石を投じたものと言ってもいいでしょう。

この決定を受けて国会は2013 年12 月4 日婚外子の相続格差を改める民法改正をしました。

具体的にどう改正したかというと、従来民法第900 条(法定相続分)第4 号には、「子、(中略)が数人あるときは、各自の相続分は相等しいものとする。ただし、摘出でない子の相続分は、摘出である子の相続分の2分の1 とし(後略)」とあったところ、但し書き以下を削除することにしたのです。

そして改正された法の適用時期は最高裁決定の出た翌日つまり2013 年9 月5 日からとしました。

それではその前に相続が開始されたものの、協議もしない、何の手続もしなくてそのままになっていた場合はどう考えたらいいのか。最高裁はその決定の中でこんな風に判示しています。「本決定の違憲判断は、相続の開始時から本決定までの間に開始された他の相続につき、本件規定を前提としてされた遺産の分割の審判その他の裁判、遺産の分割の協議その他の合意等により確定的なものとなった法律関係に影響を及ぼすものではないと解するのが相当である」

つまり、すでに遺産分割協議がまとまっているとか、調停や審判で一件落着している場合は、それを覆して分割し直すということはなし、と注意的に判示している訳です。

この書きぶりを反対解釈すれば、すでに相続が開始して数年経過していたとしても、まだ何も分割手続きが進んでいない場合は、やはり最高裁決定に従って婚外子も平等に相続させるべきだ、ということになります。

ならばもっと早く決着をつけておけばよかったというお気持ちがあるかもしれませんが、こうなった以上、ここはあなたが賢明な決断をなさって、ご兄弟、お母様を説得してみませんか。

お母様は今迄ずいぶんいやな思いをされてきたことかと思います。でも、お子さん達が大所高所に立った決断を下した上で、お母様を説得なされば、お子さん達の英断にお母様も賛成してくれるでしょう。

一方、そうして分遺手続がスムーズに終了すれば、亡くなったお父様へのご供養にもなるような気が致します。

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