肝っ玉弁護士がんのトラブル解決します 43

ベッドで書いた遺言書は有効?

解決人●渥美雅子
イラスト●小田切ヒサヒト
発行:2013年5月
更新:2014年3月

  

渥美雅子 あつみ まさこ
弁護士として家族問題、遺産相続などを専門に活躍。2003年「女性と仕事の未来館」館長を務める。2005年男女共同参画社会作り功労者内閣総理大臣表彰を受賞。『子宮癌のおかげです』など著書多数


75歳の父親の件。貿易関係の事業でそれなりの資産を築きましたが、現在は大腸がんからの肝転移で入院しています。遺産相続のことをしきりに気にしています。弁護士に相談して遺言書を作ったそうですが、内容を教えてくれません。また、入院後にベッドで新しく書いたとも言っていました。入院後は少しぼけてきたようにも思いますが、ベッドで書いたという遺言書は有効でしょうか?また、生前に見ることは可能でしょうか?

(40代、茨城県 男性会社員)

有効。ただし要式が必要

2013_05_20_02遺言書は要式行為といって民法で定める方式に従って書かなければ効果がありません。「○○に○○をあげる」「△△に100万円寄付する」等と口頭で言っても効果はありません。また、お手紙や日記や録音や携帯メール等も同じで、法律上の効果はありません。法律上効果のある遺言とは、次の3つのうちのどれかの要式を満たしているものに限ります。

①自筆証書遺言

遺言者がその全文、日付、氏名を自書し押印したもの。但し、文中の加除・変更は、遺言者がその場所を指定し、変更したことを付記して署名し、その場所に押印しておかなければならない(民法968条)。印鑑は認印でもよいが、スタンプタイプの簡易印鑑ではいけない。

②公正証書遺言

証人2人以上の立会いのもとに遺言者が、遺言の内容を公証人に口授して作成するもの。公証人はそれを聞きとって筆記し、それを証人と遺言者に読み聞かせた上それぞれ押印させて作成する(民法969条)。

③秘密証書遺言

遺言者が、遺言内容の書かれている証書(自筆で書いたものでなくてもよい)に署名押印し、それを封筒に入れて封緘する。その上で②と同様の手続きを取って作成する。内容は遺言者以外誰にもわからない(民法970条)。

この3つのうちどれかに該当すれば有効な遺言となります。内容の異なる遺言書が何通かある場合は新しいものが有効です。

ですから入院前のものが公正証書であり、入院後のものがベッドの上で書かれた自筆証書であったとしても、相互に違いがあれば、入院後の方が有効となります。

ただ、入院後「少しぼけてきた」とのこと。気がかりなのは「痴呆」の程度です。遺言をするそのときに頭がはっきりしていさえすれば成年被後見人であっても自分で遺言をすることができる(民法963条)とされていますが、そのときに事理を弁識する能力があったかないか、それが問題です。

また、遺言内容を生前に見ることは不可能です。遺言者が自ら見せてくれるなら見ることはできますが、公正証書遺言であっても事前に知ることはできません。弁護士に聞いても守秘義務があるので答えてはくれないでしょう。

遺言は遺言者が亡くなって初めて効果が発生するものですから、今から家族が準備を進めておくことは無理だと思って下さい。

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