FP黒田尚子のがんとライフプラン 14

どう変わる?2015年4月以降の「公的介護保険」の改正とその影響

黒田尚子●ファイナンシャル・プランナー
発行:2015年5月
更新:2015年10月

  

くろだ なおこ 1992年大学卒業後、大手シンクタンク勤務中にFPの資格を取得。98年にFPとして独立後、個人に対するコンサルティング業務のかたわら、雑誌への執筆、講演活動などを行っている。乳がん体験者コーディネーター

2000年4月にスタートした公的介護保険はますます増加する高齢者に備え、2015年4月以降、大改正が行われています。今回の改正の大きな目的は、「地域包括システムの構築」と「利用者負担の公平化」。がん患者にとっても無関係ではない介護保険の改正点とその影響を見てみましょう。


公的介護保険(以下、介護保険)は、すべての40歳以上の人が加入して介護保険料を納め、介護が必要になったときに所定の介護サービスが受けられる公的制度です。

65歳以上は「第1号被保険者」、40~64歳は「第2号被保険者」となります。第1号被保険者は要介護状態になった原因が何であろうと、介護サービスを受けることができますが、第2号被保険者は老化に起因する特定の病気によって要介護状態になった場合に限り、介護サービスを受けることができます。

この特定の病気には、「末期がん」が含まれており、おおむね余命6カ月間程度が判断の目安です。介護保険の適用が受けられれば、がん患者が在宅で看護を受けるときなど、一定の自己負担で介護サービスを受けることができますし、車いすや介護ベッド、手すりやスロープなどもレンタルできます。

2015年4月以降、この介護保険に新たな制度等が導入されています。改正点を押さえておきましょう。

❶特別養護老人ホーム(特養)への入所は「要介護3以上」に

特養は人気が高く、入居希望者は常に空き待ち状態。そこで2015年4月から、基本的に入居条件が「要介護3以上」に変更。ただし、現時点でも特養の入居者の多くは要介護4、5などが中心ですので、あまり影響はないと思われます。なお、すでに入居している方は対象外です。

❷低所得の高齢者の保険料の軽減が拡充

65歳以上の高齢者が支払う介護保険料は、市区町村によって基準額が異なります。所得が低い人は段階的に保険料が軽減されるしくみになっていますが、この軽減率が2015年4月から拡充されています。

❸「要支援」のサポートが市区町村に

現在、要支援1、2の半数以上が受けている訪問介護や通所介護サービス。これが今後は予防給付の対象外になります。新たな受け皿になるのは市区町村と地域のボランティア。これまでは全国どこでもほぼ同じサービスを受けられていたわけですが、今後は自治体の財政状況等で差が出る可能性があります。準備期間を考慮して、2015年度から3年間の移行期間が設けられています。

■介護保険制度改正のポイント

❹所得が一定以上の人は自己負担が2割にアップ

これまで介護保険の利用者の自己負担は、収入(所得)に関わらず一律1割でした。それが2015年8月からは平均的な年金収入の水準を上回るとされる「単身で280万円以上」「夫婦で359万円以上」の年金収入がある世帯は、自己負担が2割に。自己負担が増えるのは全体の20%にあたる人たちと見られています。

❺施設の食費や部屋代の補助認定も厳格化

特養や介護老人保健施設(老健)の入所時の食費や部屋代は原則自己負担。しかし住民税非課税世帯は、これらの負担を軽減する「補足給付」が受給できました。これが2015年8月以降、単身で1,000万円超、夫婦で2,000万円超の預貯金や有価証券などの資産を持つ人は、その対象外に。なお、非課税の遺族年金や障害年金も資産としてみなされます。

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