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FP黒田尚子のがんとライフプラン 20
お金持ちしか受けられないの?!「患者申出療養」ってどんな制度?
2016年4月から「患者申出療養」がスタートすることをご存じでしょうか?
この制度は患者からの申出を起点とする新たな保険外併用療養のしくみです。今回は、この制度が導入されることで、私たちの生活にどのような影響があるかを考えてみましょう。
患者申出療養は、今年(2015年)5月に成立した医療保険制度改革法で創設された制度です。例えば、この制度を利用して、がん患者さんが日本で未承認の薬剤を使いたいと申し出ると、それを受け入れるかどうかを医療機関が審議し、一定期間以内に*保険外併用療養として使用できるようになります。
*保険外併用療養とは、保険診療と保険外診療が例外的に認められる場合、その費用を給付する制度のこと。通常の治療と共通する部分(診察・検査・投薬・入院料等)の費用は、一般の保険診療と同様に扱われ、一部負担金を支払い、残額は保険外併用療養費として公的医療保険から給付される
具体的な手続きの流れは、国内で前例がある場合とない場合にわかれます(図1参照)。
従来の制度(先進医療などの評価療養)では、申請のために病院が研究目的として一定の症例数を集める必要がありました。それが新制度では、難病やがん患者さんが1人でも希望すれば申請可能。審査期間も平均3~6カ月から原則2~6週間に短縮され、さらに前例ができれば、大病院だけでなく地域の身近な医療機関でも受けやすくなります。
保険外併用診療ですから、その薬剤費については全額自己負担です。ただ、ほかの診療については公的医療保険の適用が受けられます。
がん患者さんにとって治療の選択肢が増えることは喜ばしいことですが、この制度には次のようなメリット・デメリットがあります(表2参照)。
とくに、デメリットの医療費の患者負担の増大は深刻な問題となるでしょう。国立がん研究センターでは、この制度の対象になると予想される抗がん薬(欧米先進国で承認され日本では未承認または適応外)は2015年1月末時点で42剤あり、これらのほとんどは1カ月あたり100万円を超える薬剤費が必要であると発表しています。
月額100万円かかるとすると年間1,200万円。とんでもない金額です。
現在、この制度の具体的な運用基準づくりが、厚労省の諮問機関・中央社会保険医療協議会で行われていますが、運用基準など安全性の確保などに重点が置かれ、患者側の費用負担の調達法などに関する議論が行われているとは思えません。
もともと資産があるお金持ちは別にしても、この費用を捻出するために、患者さんのご家族などが多額の借金を背負った場合など、FPアドバイスの必要性を強く感じる制度といえそうです。