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FP黒田尚子のがんとライフプラン 35
2017年1月からスタート! 新「介護休業制度」とその活用法
育児または家族介護を行う働く人のための法律である「育児・介護休業法」が改正され、平成28年(2016年)3月29日に成立。同年3月31日に公布され、平成29年(2017年)1月から施行されます。
がんは症状によって要介護状態になり、介護が必要になるケースもあります。今回の改正の目的は、要介護者をサポートする労働者の「介護離職」を防止し、仕事と介護の両立を可能とするための制度の整備を行うというもの。
イザというときに慌てないためにも、また制度を賢く利用して介護を上手に行うためにも、具体的な改正内容とその活用法について知っておきましょう。
そもそも介護休業とは、労働者(日雇い等を除く)が、要介護状態の対象家族を介護するための休業のことです。
対象となる家族の範囲は、配偶者、父母、子、配偶者の父母、祖父母、兄弟姉妹、孫となっています。ここでの配偶者は、戸籍上の配偶者はもちろん、事実婚も含みます。
またこれまで、祖父母、兄弟姉妹、孫については、同居・扶養要件が必要でしたが、今回の改正以降、不要となりました。
そして、「要介護状態」とは、負傷、疾病または身体上もしくは精神上の障害により、2週間以上の期間にわたり常時介護を必要とする状態をいいます。介護の必要性に関しては、医師の診断書や民生委員の証明、それに準ずる書類など、企業によって確認方法は様々です。
今回の改正の主な内容は、次の5つです。
⓵対象家族1人につき、3回を上限として、通算93日まで、介護休業を分割取得できる。
⓶介護休暇(対象家族の介護その他の世話を行う一定の労働者は、1年に5日[対象家族が2人以上の場合は10日]まで、介護その他の世話を行うための休暇を取得可)の半日単位の取得を可能とする。
⓷介護のための所定労働時間の短縮措置等を介護休業とは別に、利用開始から3年の間で2回以上の利用を可能とする。
⓸所定外労働の免除を介護終了までの期間について請求できる権利とする(新設)。
⓹有期契約労働者の介護休業取得要件を緩和する。
今回の改正のうち、とくに①②など、介護休業等が取得しやすくなるように工夫されています。例えば、要介護申請から訪問調査など、介護サービスを利用するまでの段取りや準備のために「介護休暇」を取得し、あとは症状等に応じて医師や地域包括支援センター、ケアマネジャーなどと相談しながら、「介護休業」を分割して取得するという方法も考えられるでしょう。
また、介護休業制度は、実の両親だけでなく配偶者の両親にも利用できます。ほかにも、働いている兄弟姉妹がいれば、夫婦でダブル、兄弟姉妹でトリプルといったように計画的に分担時期を決めて利用するのも一手です。
そして、最も介護休業の活用を検討したいのは、末期のがん患者の終末期など。余命告知を受けているのであれば、主治医と相談しながら、看取りのために、一緒に旅行に出かけたり、緩和ケア病棟に一緒に泊まったり。貴重な最後のひとときを過ごすために介護休業を有効に使って行きたいものです。
いずれにせよ、介護休業制度について、法律上、事業主は一定範囲の労働者を除き、その申出を拒むことができません。介護休業の申し出や介護休業をしたことを理由とした解雇や不利益な取り扱いは禁止されています。罰則規定こそないものの、義務的性格の強い法律と位置付けられています。
もし、制度利用を会社に申し出て要領を得ない場合は、都道府県労働局雇用均等室などへ相談してみましょう。介護に利用できる制度は、介護休業だけではなく、短時間勤務制度やフレックスタイム制、始業・終業時刻の繰上げ・繰下げ、労働者が利用する介護サービス費用の助成等もあります。
勤務先の就業規則などをしっかり確認することをお勧めします。
今月のワンポイント 平成28年8月1日以降に開始する介護休業から雇用保険の「介護休業給付金」の支給率が賃金の40%から67%へと引き上げられています。介護休業中は無給となることがほとんどですので、これも大切な収入源です。