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FP黒田尚子のがんとライフプラン 38
がん経験者は住宅ローンの「借換え」ができる? できない?
2016年のマイナス金利導入後、急激に下落傾向にあった固定金利型住宅ローンの適用金利が底を打ちつつあります。銀行が参考にする長期国債の利回りが、ここ半年ほどで徐々に上昇してきたことが大きな要因です。それに従って、金利水準が低いうちに現在の住宅ローンを借換えようとする人も増えています。
がん経験者の中には、罹患前に組んだ住宅ローンを見直し、借換えしたいと考えておられる方も少なくないでしょう。今回は、がん経験者が住宅ローンの借換えができるか見てみたいと思います。
住宅ローンの借換えとは、現在の残高分を借入れして、従前の住宅ローンを完済。その後、新しい銀行に返済していくという仕組みです。
借換えのメリットとして、総返済額が削減できる、あるいは金利タイプを変更できるという点が挙げられます。
後者については、例えば、金利が低かったので変動金利型で借りていたが、将来の金利上昇リスクに備えて長期の固定金利型に変更するケースや、固定金利型で借りていたが、当初の優遇期間終了に合わせて、金利の低い変動金利型に変更するケースなどが考えられます。
概ね高い借換え効果が期待できるのは、①残債期間20年以上、②ローン残高2,000万円以上、③ローン金利1.2%以上のケースです。
このほか、全体的に数は少ないものの、借換え先の特典目的で借り換えるという人もいるようです。
特典には、*8疾病保障が無料で付帯されている「住信SBIネット銀行」や、がんと診断されると住宅ローン残高が半分になるがん50%保障団信が無料で付帯されている「じぶん銀行」、イオンでの買い物が5年間5%OFFになるイオン銀行の住宅ローンなどがあります。
8疾病については、他行でも付加できますが、保障範囲が広くなっている分、保険料は借入金利に0.3~0.4%上乗せとなります。
例えば、3,000万円の住宅ローンを組んだ場合、実質的な保険料は150万円~200万円程度と、決して安い金額ではありません。
一方、借換えのデメリットは、再び諸費用がかかる。目先の借換えメリットを重視しすぎて、金利タイプを変更すると大きなリスクが生じる可能性もある、という点です。
*8大疾病=がん、脳卒中、急性心筋梗塞の3大疾病+高血圧症、糖尿病、慢性腎不全、肝硬変、慢性膵炎の5つの重度慢性疾患を加えたもの
団体信用生命保険に加入できるかが借換えのポイント
さて、これらのメリット・デメリットを踏まえて、借換えを実行するかどうかよく検討することが大切です。ただし、がん経験者の場合、新たに団体信用生命保険(以下、団信)に加入できるかどうかが問題と言えるでしょう。銀行での住宅ローンの条件が、「団信に加入できること」になっているからです。
団信の告知書の例は次表の通り(図参照)。
結論から申し上げると、がんが完治して、定期検査等も3年以内に行っていなければ、告知事項に該当しませんので、がん経験者でも団信に加入して、借換えることはできます。
例えば、8年前に、胃がんに罹患して入院・手術を行い、その後5年間定期検査を行ってきたが、ここ3年は検査等を一切行っていないケースなどです。
逆に、ここ3年以内に定期検査等を継続的に行っている場合は、告知が必要ですので、その場合は審査を通過するのは難しいのが現状でしょう。
しかし、引受保険会社によって、「がんの部位や進行度、入院・手術の有無、検査の有無・頻度、最新の検査結果や状況等」によっては、加入できる場合もあるとのこと。
そこで、告知書にこれらを詳しく記載もしくは現在の状況がわかるような診断書を添付して、告知書を提出する方法も試してみる価値はあると思います。
要するに、保険会社は、疾病別に記載された内容で審査していきますので、これが少ないと不利な審査結果になってしまうのです。
「あまり詳しく書くと、審査が通らないのでは……」と安易に思い込まずに、現在の状況を伝えるための判断材料をきちんと保険会社に伝えることが重要です。
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