FP黒田尚子のがんとライフプラン 56

経過年数が長くなるにつれて生存率がアップする⁈ 「サバイバー生存率」をライフプランに活かす

黒田尚子●ファイナンシャル・プランナー
発行:2018年11月
更新:2018年11月

  

くろだ なおこ 98年にFPとして独立後、個人に対するコンサルティング業務のかたわら、雑誌への執筆、講演活動などを行っている。乳がん体験者コーディネーター。黒田尚子FPオフィス公式HP www.naoko-kuroda.com/

9月11日、国立がん研究センターは、2011年に全国のがん診療連携拠点病院でがんと診断された患者の「3年相対生存率」が、がん全体で71.3%だったと発表しました。

同センターでは、これまで5年相対生存率や10年相対生存率を発表してきましたが、〝3年物〟が公表されるのははじめて。

他に比べて期間が短いだけに短期間で集計でき、継続的に分析することで、新薬や治療の効果を早く把握できるメリットがあると言います。

そこで今回のコラムでは、がん患者であれば誰でも一度は聞いたことがある「生存率」の考え方とライフプランについて考えてみたいと思います。

そもそも「相対生存率」って何?

がん告知を受けた際、医師から自分のがん種の生存率を聞いたことがある方もおられるかもしれません。

その場合、治癒の目安として、よく使われるのが、5年相対生存率です。

「相対生存率」とは、あるがんと診断された人が、年齢や性別が同じ日本人全体と比べて、診断から一定期間後にどれくらい生存しているかを示した指標。

100%に近いほど治療で生命を救えるがん、0%に近いほど治療で生命を救うのが難しいがんであることを意味します。

今回、同センターでは、2008年、2009年に診断された患者について集計された5年相対生存率も発表されましたが、相対生存率はがん全体で65.8%ということです。

このように、相対生存率は、基本的に経過年数が経つごとに低くなっていきます(がん種によって、治療の難しさなどの差はありますが)。

例えば、全がん協生存率によるがん全体の相対生存率をみると、1年生存率85.5%、2年生存率77.1%、3年生存率72.5%、4年生存率69.6%、5年生存率67.6%と徐々に右肩下がりになるわけです。

「相対生存率」はあくまでも目安、参考程度にとどめておく

相対生存率は、がん種や病期(ステージ)によっても異なりますので、「生存率を告げられて、あまりの低さにショックを受けた」という方もいるかもしれません。

ただし、これらはあくまでも割合です。しかも、〝5年物〟なら5年以上前、〝10年物〟なら10年以上前に調べられたデータですから、今のがん医療の進歩のスピードから考えると、現在の医療とのかい離が生じていることも加味すべきです。

したがって、生存率はあくまでも参考程度。数字の意味をきちんと理解することが大切だと考えています。

がん医療の進歩は、家計やライフプランにさまざまな影響を与える

とはいっても、ライフプランを考えるときに、「自分が、あとどれくらい生きられるか」を意識しないがん患者はいません。

私自身も、乳がん告知を受けた際に、担当医から「5年生存率は50%」と告げられ、あくまでも目安にしか過ぎないと頭では理解していても、精神的にはショックを受けました。

また、ご相談に来るがん患者の中には、「20年近く前にがん告知を受けた。こんなに生きられるとは思っていなかったので、ほとんど貯金をしていなかった。今後定年を迎えるが、まだ死にそうになく、老後が心配だ」という方もおられます。

中には「再発したが、薬物治療の効果が高いので、とくにQOL(生活の質)に変化はない。ただ、仕事を辞めてしまったので、医療費がかかり続けるのが大変。本当に『がんで死なない』ということを実感した」という方も。

いつも感じるように、がん経験者としては、このような医療の進歩は喜ばしいこと。しかし、罹患後の家計やライフプランを考える際に、生存率をどのように捉えるかは切実な問題なのです。

「サバイバー生存率」で経過年数に応じたリアルな生存の可能性を把握する

そこで最近注目を集めているのが「サバイバー生存率」です。

これは、診断から一定年数後生存しているサバイバーの、その後の累積生存率を言います。1年サバイバーの5年生存率は、診断から1年後に生存している者に限って算出した、その後の5年生存率(診断からは合計6年後)となります。

サバイバー生存率は、英語で「conditional survival rate」(条件付き生存率)と表現され、20年以上前から米国で使われてきました。

特徴は、相対生存率とは逆に、診断されてからの年数が経過するにつれ上昇していく傾向があるという点です。比較的生存率が低いとされる膵がん、肺がんでも、診断から5年サバイバーの5年相対生存率は80%近くまで上昇しています(図表参照)。

なぜなら、相対生存率の場合、診断から1~2年以内に亡くなる症状の重い患者も含まれるためで、その上、診断された時点の数字が固定化され、医療の進歩なども反映されません。要するに、相対生存率では、診断されてから、1~2年が経過した患者が、自分の経過年数に応じたその後の予後の現実的な状況を把握しにくいということです。

そこで、相対生存率とともに、サバイバー生存率を活用することは、罹患後のライフプランや人生の方向性を考えたり、仕事と治療の両立や治療を選択したりする上で、必要ではないかと考えています。

 

今月のワンポイント サバイバー生存率において100%というのは「ふつうの日本人と死亡率が同じ」ことを意味し、完治したと同じ状態。図表では、乳がん、前立腺がんのサバイバー生存率が横ばい状態である点が気になりますが、これらは、もともと生存率が高いものの、再発や治療抵抗性などにより、ある一定の割合で死亡が起こるため、100%に近づかないのだそうです。

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