FP黒田尚子のがんとライフプラン 60

遺族年金を受給していた妻が再婚したら、遺族年金はどうなる?

黒田尚子●ファイナンシャル・プランナー
発行:2019年3月
更新:2019年3月

  

くろだ なおこ 98年にFPとして独立後、個人に対するコンサルティング業務のかたわら、雑誌への執筆、講演活動などを行っている。乳がん体験者コーディネーター。黒田尚子FPオフィス公式HP www.naoko-kuroda.com/

がん患者さんからの相談の中には、「自分に万が一のことがあった場合、遺された妻や子どもの生活はどうなるのか?」といった遺族保障に関するものがあります。

私たちが加入している公的年金には、65歳になったときの老齢年金や障害状態になったときの障害年金以外に遺族年金という3つ目の制度があり、遺族が生活に困らないよう最低限の年金が受け取れる仕組みがあるのです。

ただ、遺族年金を受給している妻が再婚したり、その子どもが再婚相手と養子縁組をしたりといったことも考えられます。その場合、遺族年金はどうなるのでしょうか?

夫ががんで亡くなり、遺族年金を受給していたA子さんが再婚することに……

派遣社員として働くA子さん(38歳)は、4年前に5歳年上の会社員の夫をがんで亡くしました。夫の死亡当時は専業主婦で、子どももまだ3歳。それでも、実家の両親がまだ健在だったため、地元に戻り、子どもの世話を両親に手伝ってもらいながら、何とか生活を立て直すことができたのです。とりわけ、年間150万円以上受け取れる遺族年金は大きな収入の柱となりました。

そんなA子さんですが、地元に戻ったことで、以前親しくしていた友人たちとの交流が再開し、その内の1人であるB男さんと再婚することに。

B男さんは初婚で、A子さんの両親や子どもとの関係も良好。性格も温厚ですし、気心が知れている点は安心です。ただ、A子さんと同じく非正規雇用のため、収入面で不安が残るとのこと。共働きは覚悟しているものの、できれば安定して受け取れる遺族年金を手放したくないと考えるA子さんは、再婚した場合、遺族年金が継続して受け取れるのかどうか相談にこられました。

基本的には、受け取れる遺族年金は大きく2つ

まず、遺族年金のキホンからご説明すると、公的遺族年金には、「遺族基礎年金」と「遺族厚生年金」の2つがあります。

それぞれ、どの年金が受け取れるかは、亡くなった人(被保険者)の職業によって異なり、自営業や自由業の場合は前者のみ。会社員や公務員の場合は前者と後者の両方が受給できます。

そして、遺族年金が受給できる遺族の範囲も年金の種類によって異なります。

受給できる遺族の範囲は、遺族基礎年金の場合、亡くなった人によって生計が維持されていた子どものいる配偶者または子ども。遺族厚生年金の場合、第1順位(配偶者または子ども)、第2順位(父母)、第3順位(孫)、第4順位(祖父母)です。

なお、年金上の子どもというのは、18歳以下の子ども(18歳到達年度の末日までにある子)もしくは20歳未満で障害年金の障害等級1級または2級の子どもを意味します。

子どもが、まだまだ教育費がかかる時期であっても、一定の年齢になれば、年金受給の対象から外れてしまう点には注意が必要です。

とにかく、一般的には、今回のA子さんの事例のように、「厚生年金に加入している会社員の夫を亡くし、18歳以下の子どもがいる妻」であれば、遺族基礎年金と遺族厚生年金の両方を受給できると覚えておいてください。

また、子どもについては、両方の受給権が発生しているものの、母親であるA子さんが受給しているので支給停止という状態です。

再婚したら、妻は遺族年金の受給権は失権するが、子は失権しない

さて、それでは、A子さんがB男さんと再婚した場合、遺族年金はどうなるのでしょうか?

まず、再婚することでA子さんは遺族基礎年金と遺族厚生年金どちらも失権となり、継続して受け取ることはできません(図表参照)。

【図表】遺族年金の失権の事由

出典:日本年金機構HPより一部抜粋の上、筆者が編集作成

そして子どもは、 妻であるA子さんが失権したことによって支給停止が解除されますが、遺族基礎年金については、「生計を同じくするその子の父または母」がいるため支給停止のまま。遺族厚生年金のみ受給できることになります。

さらに、A子さんの子どもがB男さんと養子縁組をしたとしても、直系血族または直系姻族以外の人の養子となったときは失権しますが、祖父母や父母との場合は例外的に失権しないので、A子さんの再婚相手であるB男さんの養子となっても遺族年金は失権とならないのです。

年金は事実婚や内縁関係にあるかどうかで判断される

ただ、子どもが遺族厚生年金を受け取れるといっても、前述のA子さんの事例でいえば、年金額は1/3程度に減ってしまいます。

となると、中には、これまで通り遺族年金を受給するために、入籍せずに事実婚や内縁関係にしておく、という人もいるかもしれません。

しかし、年金は、実態がどうかということを重視するため、事実婚や内縁関係でも遺族厚生年金が支給停止となる場合もありますのでご注意を。

ただし、逆に、内縁関係にある夫が死亡した場合でも、妻は遺族年金が受け取れるわけですから、有利な面もあるわけです。

そして、A子さんがB男さんと再婚して、その後、離婚をしたとしても、再び遺族年金を受給することはできません。

 

今月のワンポイント 改正によって、2014年4月から父子家庭にも遺族基礎年金が支給されるようになっていますが、基本的に年金は男女不平等な仕組み。家計を同じように支えていても、共働きの正社員の夫が亡くなった場合に比べ、同条件の妻が亡くなった場合の遺族年金は十分とはいえないので、その分の保障は自助努力で備えておく必要があります。

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