黒田尚子のがん節約術

処方間隔を最大にしつつ、高額療養費制度をフル活用すべし

イラスト/コヤマ ノリエ
発行:2012年4月
更新:2013年6月

  

がん患者やそのご家族にとって、がんとお金に関する不安や問題を少しでも解消し、治療に専念できる手助けになればと考えています。

黒田尚子(くろだ なおこ)

1992年大学卒業後、大手シンクタンク勤務中にFPの資格を取得。1998年にFPとして独立後、個人に対するコンサルティング業務のかたわら、雑誌への執筆、講演活動などを行っている。

Q:主人が慢性骨髄性白血病のグリベックを服用。毎月の支払いが高い。

主人が慢性骨髄性白血病と診断され、昨年からグリベックという薬を服用しています。当初はありがたかったのですが、毎月の支払いの高さに正直参っています。主治医の話だと、薬が効いている間はずっと飲み続けないといけないと言われており、この先どうなるのか……もちろん主人には言えません。何か少しでもいい方法があれば教えてください。(50代女性)

A:高額な医療費を長期に払い続ける人のために、「高額療養費制度」

グリベック……この薬は、慢性骨髄性白血病患者の長期生存を可能にした薬として登場し、その効能とともに、非常に高額なことが知られています。

私は乳がん患者ですが、グリベックと同じ分子標的治療薬ハーセプチンも、乳がん治療に効果的な一方、従来の抗がん剤治療より2~6倍も費用負担が重くなるそうです。ハーセプチンを服用するがん友からも「お金に羽が生えたように飛んでくの」というツライひと言が。

科学の進歩で、良く効く薬が次々と開発されるのは、がん患者にとってありがたい話です。でも値段があまりにも高いのでは、素直に喜べないのが正直なトコロ。

そこで、高額な医療費を長期に払い続ける人のために、「高額療養費制度」があります。この制度は、前にも少しご紹介しましたが、支払った医療費が一定額を超えると(「自己負担限度額」といいます)、超過分が戻ってくるというもの。この自己負担限度額は、年齢や所得によって多少異なります。

例えば、相談者のご主人が70歳未満で所得の区分「一般」(おおよそ年収210~790万円以下)の場合、仮に1カ月の総医療費が100万円(患者負担30万円)だとすると、自己負担限度額は8万7430円。約21万円が高額療養費として戻ってくるわけです。

さらに、多数該当といって、3回以上、高額療養費が支給されると、4回目からハードルが低くなります。前述と同条件の場合であれば、4回目以降の自己負担限度額は4万4400円に。

このしくみを利用し、可能であれば、ご主人も、グリベックの処方間隔を4週間から3カ月処方に切り替えると、年間の自己負担限度額は17万7600円(4回目以降、4万4400円×4回)となり、4週間処方に比べて、年間35万5200円(53万2800円~17万7600円)も医療費負担が軽くるのです!

ただし、高額療養費を使いこなすには、しくみを知る必要がありますし、もちろん申請が原則。そのため、適用漏れも多いようで「もしかして自分も……」と心当たりがある人は、社会保険事務所や各自治体など保険証に記載されている保険者に問い合わせることをお勧めします。2年程度はさかのぼって請求できるかもしれません。

なお、入院時には、あらかじめ「自己負担限度額適用認定証」を提出しておけば病院窓口の支払いは自己負担限度額まででOK。平成24年4月からは、外来でもこの事前申請のしくみが導入されます。該当しそうな人は忘れないうちに手続きしておきましょう。

FP黒田尚子からひと言
高額療養費は社会保障制度改革の論点の1つ。がん患者としては今後の行く末に目が離せませんね。

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