黒田尚子のがん節約術

困りごとは専門家をつかまえて聞くのが一番

イラスト/コヤマ ノリエ
発行:2012年12月
更新:2019年7月

  

がん患者やそのご家族にとって、がんとお金に関する不安や問題を少しでも解消し、治療に専念できる手助けになればと考えています。

黒田尚子(くろだ なおこ)

1992年大学卒業後、大手シンクタンク勤務中にFPの資格を取得。1998年にFPとして独立後、個人に対するコンサルティング業務のかたわら、雑誌への執筆、講演活動などを行っている。

Q:治療費の相談を気軽にできる機関はないですか?

1期の胃がんが見つかり、手術を受ける予定です。現在、収入は年金だけですので治療費が心配です。利用可能な公的制度は積極的に利用していきたいと思いますが、自分にはどういった制度が適用できて、どのような手続きが必要なのかよくわかりません。お金のことは医療従事者に聞きづらいし、子どもたちも近くに住んでいないので誰に相談していいのかわかりません。どこか身近に相談に乗っていただける機関などないでしょうか?

(70歳 男性)

A:全国がん診療連携拠点病院に相談窓口「相談支援センター」があります。

がん患者やそのご家族にとって、病気のこと、お金のこと、保険のことなど「ちょっと聞きたい」が山積み。そんなとき気軽に相談できる場所があればなあ、と感じた人は少なくないはずです。

とりわけ公的制度は「セルフサービス」が原則。利用時にはすべて自分で申請しなければならず、ある程度そのしくみや内容を知っている必要があるわけです。

しかし、残念ながら今の日本の社会保障サービスは、利用者がわかりやすい仕組みになっているとはいえません。サービスごとに窓口が存在するため、利用者はそのたびに担当部署を調べ、窓口を渡り歩かなければならないのです。

そこで心強いミカタが相談支援センターです。全国397カ所あるがん診療連携拠点病院に設けられた相談窓口で、がんに関する治療や療養生活のこと、地域の医療機関、介護福祉施設や緩和ケアなどの療養支援施設、お住まいの市区町村で行っている助成制度などについて、電話や直接会って相談することができます。もちろん全て無料。相談には、医療ソーシャルワーカーや看護師等の専門家が相談員として対応してくれます。

ちなみに、医療ソーシャルワーカーというのは、患者やその家族が安心して治療を進められるよう相談に乗り、必要な機関への連絡を調整・支援する社会福祉のスペシャリスト。相談できる内容は、多岐に渡り、治療のことや転院先の紹介、療養中の育児、家族や医療従事者との人間関係のことまで「とにかくどんなことでも相談しちゃっていいんだ~」という印象です。

ところがです。平成21年度のがん施策に関する世論調査によると相談支援センターの認知状況は、「知っている」人が29・9%であるものの、実際に「利用したことがある」人は2・1%! せっかくの相談の場が十分に活用されていない状況がうかがえます。

なお国立がん研究センターがん対策情報センター「がん情報サービス」のHPでは、各地の相談支援センターの情報を閲覧できます。

また、日本対がん協会では「がんホットライン」など3種類の電話や面談の無料相談窓口を設けていますし、最近、相談室を設置する病院も増えてきました。自分の病院に相談室があることを知らない人も多いので、総合案内などで確認してみましょう。

これらの相談機関は、小冊子やリーフレット等、まさにがん情報の宝庫。診察の待ち時間にでも1度覗いてみてはいかがでしょうか?

FP黒田尚子からひと言
とにかく困っていることがあれば「知っている人に聞く」のが一番の早道。専門家を上手に活用することをお勧めします。

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