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仕事をしながら療養する
障害者雇用枠で契約社員に。2つの資格取得でステップアップ
山田裕一さん(32歳)は、19歳の大学生のとき、慢性骨髄性白血病で緊急入院し、造血幹細胞移植をしたが再発する。一方、入院中に深部静脈血栓症を発症し、血栓の影響で左足の神経が圧迫され、足首が動かなくなった。大学卒業後は、就職したものの、激務で退職。その後、障害者雇用枠で契約社員に。29歳で社会保険労務士、30歳で第1種衛生管理者の試験に合格する。
19歳で、慢性骨髄性白血病に。緊急入院という試練
2000年6月、慢性骨髄性白血病で大学病院に緊急入院。進行した状態だった。入院3日目、深部静脈血栓症を発症し、血栓の影響で神経が圧迫され、左足の足首が動かなくなった。左足が地面につくたびに痛む。左足と右足に中敷きをして歩行しやすい状態を作っている。
化学療法では完全寛解には至らず、同年9月、造血幹細胞移植を受けた。約8カ月の入院期間を経て2001年2月に退院。しかし、2002年2月に再発。グリベックの服用を開始した。
服用して数カ月で寛解の状態になった。
「再発したとき、自分の最期を考えた。どうせ死ぬなら最期までやりたいことをやりきろう。前向きな気持ちになれた」という。
骨髄移植から4年後、就職を見据え、体力作りのためにアルバイトを探す。求人広告で、通信販売のコールセンターのオペレーターの仕事を見つけた。電話を受けて、商品の受注や返品業務をする。1日3~4時間、週3~4日のシフト制で、働きやすかった。
結局、就職活動を始めるまでの1年間続けた。働ける自信もついた。「健康な人と同じスタートラインに立って働きたい」と思った。
ところが、就職活動は厳しかった。エントリーした企業数は50~60社。面接では、2年間の休学をしていた理由を聞かれ、自分から足の障害、病気について話した。
面接時には「営業は難しいな」「病気だから……」と言われた。履歴書に記入した既往歴の白血病という病名が大きな壁になった。
落ち込むこともあった。やっと、運送会社の事務職に就職できたが、その当時の体力で現場はきつかった。業務の引き継ぎが非常に短く、プレッシャーがかかった。入社後20日前後で、残業時間は3~4時間。通勤時間も2時間以上で、体力的、精神的につらかった。
入社4カ月で退職。その後、体調を崩し、肺炎で入院した。このときに、社会保険労務士の受験勉強を開始した。1回目の受験は不合格。
2006年9月、身体障害者手帳を取得する。企業の障害雇用枠を活用して、就労チャンスを増やそうと考えた。退職して1年後、今度は、自動車会社のコールセンターで派遣社員として働く。シフト制で働けたから、病院の通院と仕事のスケジュールを組み合わせることができた。
デジタルカメラの開発部署に勤めながら社会保険労務士試験に合格
2008年12月、障害者雇用専門の人材紹介会社の紹介でオリンパスイメージング株式会社に契約社員として入社。デジタルカメラの開発部署で、エンジニアのアシスタント業務に就く。書類作成や、試験の準備などを担当している。
入社してからデジタルカメラについて一生懸命勉強した。通勤時間は、自宅から片道50分ほど。入社後、29歳のとき、社会保険労務士に合格。翌年、第1種衛生管理者試験も合格した。
「資格を取得して、相手にスキルを目に見える形にしたかった。資格をとってもすぐに希望する仕事ができるわけではないが、チャンスになると思っています。素地があれば、仕事に順応しやすいと思う」という。
社内では、衛生管理者として、週1回、労働災害の防止のために尽力している。例えば、転びそうな作業を見たら、注意を呼びかける。熱中症対策のパンフレットを作成したりする。
山田さんは、病気や障害、通院などについて、上司の課長や部長にできるだけオープンにして、理解を求めてきた。あるとき、部長から「特別扱いはしないが、配慮はします」と言われた。うれしかった。所属部署は、障害者雇用の実績があったそうで、障害者や病気をした人を違和感なく、受け入れてくれたという。
「病気だから、障害者だから、仕事ができないと思われたくない。言い訳にしたくない。一生懸命、仕事に取り組んでいます」
と山田さん。
仕事では「できること、できないこと」を相手に伝えることが大事
社労士資格は、社外でのボランティア活動などに活かしている。通院中の大学病院血液内科で、骨髄移植を控えた患者さんに、体験を話しに行く。そのとき、医療費などが話題になると、健康保険法の傷病手当金などの制度にも触れる。
友人や親族から、障害厚生年金などの相談を受けることもある。社外の勉強会にも自主的に参加し、スキルアップに努める。
現在、大学病院血液内科には、3カ月に1回のペースで、土曜日に通院。その他に、リハビリ科、皮膚科にも通院。皮膚科には、3~6カ月に1回のペースで、午後半休をもらって平日に通院している。
骨髄移植の合併症には、移植した骨髄の中のリンパ球が患者の細胞を攻撃するGVHD(移植片対宿主病)がある。また、毎朝飲んでいるグリベックにも副作用がある。副作用が出ないように意識しながら生活し、仕事をする。
「通院は、できるだけ業務に支障をきたさないように調整します。体力に気兼ねなく働ける環境づくりに心がけています。自分のできること、できないことを相手に伝えることが大切だと思っています」
と山田さんは語っている。