薬の効果が高い人ほど現れやすい副作用。適切な対処をして治療を続けるには
「手足症候群」の初期症状を知って、セルフケアしよう
「積極的休薬が、がん治療の
効果を高めます」と話す
田口哲也さん
悪化すると、手を使うさまざまな作業に支障を来たし、痛みで歩けなくなるなど、日常生活上の不便が著しい手足症候群。
特定のがん治療薬で現れるこの副作用は、早期発見とセルフケアが大切という。まずは、症状を知ることから始めよう。
予防や対処次第で治療は続けられる
手足症候群は、手のひらや足の裏に集中的に起こる皮膚炎である。赤みや腫れ、ヒリヒリ・チクチクするような知覚異常で始まり、進行すると皮膚がはがれたり、ひび割れができたり、強い痛みで歩けなくなるなど日常生活に支障が出てくる。
手足症候群とされる症例は1980年代から5-FU(*)で、90年代にはタキソテール(*)やゼローダ(*)、2000年に入ってからはシタラビン(*)やアドリアシン(*)で各国から報告されており、欧米ではよく知られた副作用だ。
一方、日本ではゼローダが再発乳がんの治療薬として発売されたことにより増加しはじめ、大腸がんや胃がんにも適応となり、使用する患者さんが激増したことからますます注目されるようになった。
ゼローダの臨床試験に携わり、手足症候群に詳しい京都府立医科大学内分泌・乳腺外科教授の田口哲也さんは次のように話す。
「治療が始まったら症状が出る前から手足をこまめに手入れするなど、日常生活の工夫で発症をある程度予防したり、症状を軽くすることができます。起こってきたら休薬という対応策があり、適切な時期に対処すれば治療の中断に至ることもありません」
*5-FU=一般名フルオロウラシル
*タキソテール=一般名ドセタキセル
*ゼローダ=一般名カペシタビン
*シタラビン=商品名キロサイド/サイトサール
*アドリアシン=一般名ドキソルビシン
症状を知って早期発見をしよう
手足症候群が起こりやすい部位は、手では指先や指関節、足の裏では指先、指の付け根、かかとなどの体重がかかるところだが、薬剤によって症状に違いがある。
ゼローダでは手足全体が真っ赤に腫れ、光沢感が出てくる(図1)。高度な角化(皮膚が硬く厚くなる)のため指紋がなくなることもある。
50歳代 女性 カペシタビン投与法 発現時期 症 状 治療と経過 |
スーテント(*)やネクサバール(*)はよく動かすところ、圧力がかかる部分に起こる。スーテントでは爪の周囲の炎症も頻発する(図2)。
田口さんは「気をつけたいのが足の裏」と注意を促す。
「手と比べて足はケアが面倒で、観察もおろそかになりがち。痛いなと思って見たら水ぶくれができていたり皮膚がめくれていたりというふうに、進行してから発見され、重症化する傾向があります(図3)。手の症状が足より先に出ることが多いので、手に出てきたら足も意識しましょう」
症 状 | 初期症状として、無痛性の色素沈着、変形(グレード1)。症状が進行すると、爪の脱落などにより、痛みを伴う |
対処法 | 色素沈着の場合は基本的に無処置。 爪の変形の場合、症状が進行しないようこまめに爪の手入れを行う。 痛みのある(グレード2以上)場合はカペシタビンを休薬し、保湿効果と抗炎症効果を目的とした対症療法を行う。手足(患部)に過度の圧力・摩擦をかけない |
<グレード3> | |
薬剤 | ソラフェニブ |
疾患 | 腎細胞がん |
所見 | かかとから足の縁にかけて、かなり赤くただれて腫れており、大きな水ぶくれができている。痛みのせいで歩けない状態。グレード3と判定 |
本のページが開きづらい |
箸を持ちにくい |
包丁が持ちにくい |
おにぎりがにぎりづらい |
入浴時に手や足の皮膚がしみる |
革靴を履くときに違和感がある |
パンプスが履きにくい |
紐が結びにくい |
ボタンがとめにくい |
キーボードが打ちづらい |
スーパーのビ二ール袋が開けにくい |
お札が数えづらい |
財布から小銭が出しにくい |
細かい化粧がしづらくなった |
また出現時期もさまざまで、ゼローダでは2コース目に発症のピークがあり、ドキシル(*)やネクサバールは初回から、スーテントは初回のこともあれば途中から、さらにかなり遅れて出るケースもある。
「このようにそれぞれの薬で特徴がありますから、患者さんはご自身の薬で起こる時期や初期症状を把握しておく必要があります(図4)。併せて、手足をよく観察し、早期発見に努めましょう」
*スーテント=一般名スニチニブ
*ネクサバール=一般名ソラフェニブ
*ドキシル=一般名ドキソルビシン
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