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抗がん剤治療の新しい支持療法として期待され、臨床試験開始
見直され始めた成分栄養剤の口内炎軽減効果

監修:田原信 国立がん研究センター東病院頭頸部腫瘍科・形成外科副科長
福井忠久 山形大学医学部臨床腫瘍学講座助教
中山昇典 神奈川県立がんセンター消化器内科医師
取材・文:「がんサポート」編集部
発行:2011年2月
更新:2013年4月

  

田原信さん 国立がん研究センター東病院
頭頸部腫瘍科・形成外科副科長の
田原信さん

これまで、とかく抗がん剤の効果ばかりが注目されがちだった食道がんや頭頸部がんの化学放射線治療において、抗がん剤の副作用を軽減したり、患者さんの体力や栄養状態を維持する支持療法への注目度が高まってきている。
そこで今回は、厚生労働省研究として第2相試験も行われている、この分野の最前線で活躍する医師の方々にお話を伺った。。


多施設共同研究課題の1つに、初めて成分栄養剤が!

頭頸部がんが専門の国立がん研究センター東病院頭頸部腫瘍科・形成外科副科長の田原信さんは、JCOG(日本臨床腫瘍研究グループ)で頭頸部がんの治療法確立へ向けた研究を行う班の一員として、口内炎に対する支持療法の重要性を強く訴える。

「まず、頭頸部がんが他のがん種と比較して特徴的なことは、がんが見つかった時点でかなり進行しているケースが多いということが挙げられます。ここに来られる方の6割方はステージ3~4の進行がんです」

この原因としては、症状を自覚しないまま大きくなるまで放置してしまうのもさることながら、開業医などで最初に診察する耳鼻科の医師にがんに詳しい人材が少ないことも大きいようだ。外から見ただけでは見つけられないために、ちょっとした炎症などは抗生剤を渡されておしまいということも多く、長期間放置された後で、本格的に症状が出てから大学病院などで突然がんを宣告されるといったことが起きるという。

[図1 放射線化学療法による口内炎の進行プロセス]
図1 放射線化学療法による口内炎の進行プロセス

粘膜断面図、山形大学医学部臨床腫瘍学講座助教福井忠久さんより資料提供 出典:「The Journal of Supportive oncology January/February2004 StephenT.Sonis, DMD, DMSc」

放射線増感作用と副作用。抗がん剤は両刃の剣

[図2 頭頸部分類図]
図2 頭頸部分類図

頭頸部は様々な部位に分かれており、しかも部位ごとにそれぞれ別のがんとして分類しなければいけないとまで言われるほど複雑である。その上飲み込む、しゃべるといった機能面や、手術で顔の形が変わるといった外見上の問題も抱えているため、手術を拒否する患者さんも多い。

「70歳のご老人でも孫としゃべりたいから声を失うのは死んでも嫌だと訴えてくることもあります」

このように近年の頭頸部がん治療は、進行具合や患者さん本人の希望などを考慮して、手術よりも抗がん剤と放射線を併用した治療を選択するケースが増えてきている。

「この併用療法では、抗がん剤は放射線の効果を高める増感剤として投与されます。明らかに放射線単独よりも成績が良いのですが、問題は、抗がん剤がさまざまな副作用を引き起こすことです」

そのため、がん研究センター東病院では、2002年までは、3週間ほど治療したのち、副作用が発現したら2週間ほど休薬して回復を待つといった方法が採られていた(図3)。

[図3 手術のできない局所進行頭頸部がんに対する治療スケジュール(1992~2002年)]
図3 手術のできない局所進行頭頸部がんに対する治療スケジュール(1992~2002年)

支持療法の成否が治療継続のカギ

しかしその後、海外から、できるだけ休まず短期間のあいだに集中して治療を行うほうが5年生存率が上がるというデータがたくさん出てきた。

具体的に言えば、全治療期間が100日を超えると治療成績が大きく落ちるとか、治療期間が11週未満の場合は5年生存率が48パーセントなのに対して11週から13週だと27パーセントまで極端に落ち、それ以上長くなると25パーセントと、あまり差がなくなるなどといった報告がされた(図4)。

[図4 全治療期間の長さによる治療成績の比較]
図4 全治療期間の長さによる治療成績の比較

そこで田原さんは、2002年から原則として、副作用が発症しても休薬期間を設けずに治療を完遂する方針に切り替えた。

「たとえば口内炎の場合、もう患者さんの口の中は真っ白です。中には血が出ている人もいる。でも僕らは、よほど高熱が出て具合が悪くならない限り治療を続けます。なぜかと言えば、治癒できる治療だからです。治すためですから辛くてもあえて患者さんにがんばっていただく。ただし、休まず治療を続けるために不可欠なのが支持療法なんです。栄養管理・口腔内管理・疼痛管理、全部やらないと、休まずに治療を完遂することがきわめて難しくなるんです」

2002年当時は、支持療法という概念がまだほとんど浸透していない時期。そんな中で田原さんは支持療法の重要性に実感として気付き、実践していったのだという。


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