ジェムザールとシスプラチンの術後補助療法はできるか
関門部胆管がんの手術後、主治医から、*ジェムザールと*TS-1の併用療法を勧められました。アメリカやイギリスでは、ジェムザールとシスプラチンの併用療法が第一選択の治療法とされているようですが、日本は違うのですか?また、単剤と多剤併用療法の違いとは。
(63歳 男性 長野県)
A 保険適用は、ジェムザールとTS-1のみ
お問い合わせの通り、世界的傾向としては、胆道がんの化学療法で多剤併用する場合には、ジェムザール+シスプラチンが第一選択とされます。これは欧米で行われた無作為化比較試験の結果から、決められたもので、日本でも同様の試験が2010年に行われ、昨年末改訂された『胆道癌診療ガイドライン』第2版では、手術不能例の第一選択とされました。
しかし、術後補助療法に関しては、多剤併用療法として、ジェムザール+TS-1を選択する場合があります。これは膵がんの臨床試験を参考にした選択であり、胆道がんではエビデンスはありません。
質問者の主治医が、シスプラチンではなくTS-1の併用を勧めたのは、そういった背景を考慮したためでしょう。
また、化学療法には、1種類の薬剤だけを用いる単剤療法と、いくつかの薬剤を組み合わせて使う多剤併用療法があります。
臨床試験によっては、多剤併用療法の効果が優れているとのデータもありますが、多剤併用療法が効果的なのは、全身状態(PS)が良好な患者さんという前提を忘れないでください。「単剤よりも多剤でたくさんの薬剤を併用した方が、効き目が高い」とイメージをお持ちの方もいるかもしれません。しかし薬の効果は、身体の状態に影響されることもあるのです。以下に、全身状態の一覧を挙げました。全身状態が2以上に当てはまる方は、単剤の使用をお勧めします。
(0) 無症状で社会活動ができ、制限を受けることなく発病前と同等に振る舞える。
(1) 軽度の症状があり、肉体労働は制限を受けるが、歩行、軽労働や座業はできる。例えば軽い家事、事務など
(2) 歩行や身の回りのことはできるが、時に少し介助がいることもある。軽労働はできないが、日中の50%以上は起居している。
(3) 身の回りのある程度のことはできるが、しばしば介助がいり、日中の50%以上は就床している。
(4) 身の回りのこともできず、常に介助を要し、終日就床を必要としている。
*ジェムザール=一般名ゲムシタビン *TS-1=一般名テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム