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30代でも自己チェックや検診は必要か

回答者:上野 貴史
板橋中央総合病院 外科医師
発行:2010年7月
更新:2014年1月

  

36歳の会社員です。中学以来、仲のよい同い年の友人が乳がんになり、先日、手術を受けました。幸い経過は良好で、ひと安心しています。ただ、私くらいの年代でもがんになるのだと、改めて驚いています。私の会社での乳がん検診は40歳以上となっていますが、それまでの間も、検診や自己チェックなどは行っていたほうがよいのでしょうか。

(宮崎県 女性 36歳)

A 30代の検診は必要、というエビデンスはまだない

自己検診に関しては、行ってマイナスになるようなことはまったくありませんが、かといって、自己検診をすることで、乳がんの死亡率が下がるというデータはありません。中国とロシアで行われた大規模臨床試験では、自己検診を定期的に行っても、乳がんによる死亡率は変わりませんでした。

ただし臨床試験を厳密に行うことは困難であり、自己検診で恩恵を受けるという可能性は完全には否定されておらず、一般的には、定期的な自己検診が推奨されています。

自己検診の方法は、医療施設に置いてあるパンフレットや健康雑誌、書籍、インターネットなどの情報を参考にするとよいでしょう。乳がん検診に関しては、40歳以上の女性にマンモグラフィ検査を行えば、乳がんの死亡率が2~3割下がるというデータがあり、今のところ、これが唯一のエビデンス(科学的根拠)のある乳がん検診です。

ご相談者は36歳ですから、エビデンスのレベルでいえば、検診に関しては有効なものはありません。

マンモグラフィ検査は年齢が下がるほど、発見率が下がる傾向があります。その上、マンモグラフィ検査は放射線を使うため、被曝の害を考慮する必要もあります。

また、がんではないのにがんではないかと疑われ、侵襲的な検査をされる偽陽性の問題もあります。これらのことから遺伝性、家族性乳がんが疑われるなどの特別な場合をのぞいて、30代でのマンモグラフィ検診は勧められていません。

では、30代で乳がんが心配な場合はどうするのがよいかといえば、超音波検査を受けるとよいかもしれません。若年者の乳腺でも、超音波検査ではしこりの有無などはよくわかります。また、マンモグラフィ検査と違って、超音波検査は無害です。

ただし、乳がん検診に対する超音波検査の有効性に関しては、現在日本で試験中であり、その結果はまだわかっていません。検診の効果があるのではないかという期待を持たれている段階です。また、しこりになる前の段階である非浸潤性乳がんの検出に関しては、マンモグラフィ検査よりも精度が落ちるという指摘もあります。

乳がん検診は、一般的には40歳以上になってから受けるということでよいのですが、家族に乳がんになった人がいる場合などは、30代のうちに超音波検査などを受けてみるのもよいかもしれません。検査を受ける場合、原則として保険は使えず、実費負担になりますが、胸に違和感があるなどの症状を訴えれば、保険を使って検査を受けることができます(正しくは症状がある場合は検診とは言いません)。また、検診は万能なわけではなく、見落としもあるため、過剰な期待を持たないことも大切です。

しこりを触れるなどの症状がある場合は、検診ではないので30代でもきちんと受診する必要があるのは言うまでもありません。

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