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ホルモン感受性陽性、HER2陰性。術後の治療法は?

回答者:上野 貴史
板橋中央総合病院 外科医師
発行:2010年4月
更新:2014年1月

  

左の乳房を切除する手術を受けました。病理検査では、ホルモン感受性は陽性で、HER2陰性でした。お聞きしたいのは、手術後の治療です。どんな治療を受けたらよいのでしょうか。たくさんあるようなので、迷っています。また、化学療法は併用したほうがよいのでしょうか。手術後の治療法を選ぶときのポイントを、アドバイスしてください。

(徳島県 女性 52歳)

A 再発リスクがどの程度か、が重要

リンパ節転移があったのかどうか、あったとすればどれくらいか、ホルモン感受性が陽性だとしてもその程度はどれくらいなのか、もう少し詳しい情報が必要です。

一般的には、2009年3月のザンクトガレン国際専門家合意会議での合意をもとに治療選択を行います。

大まかにいうと、再発リスクがあまりない人は、化学療法による副作用に比べて、得られる利益がそれほどないため、ホルモン療法だけでもよいとされています。再発リスクがある程度ある人は、ホルモン療法と化学療法を併用します。

ご相談者のようにホルモン感受性が陽性なら、ホルモン療法は必要です。ホルモン療法単独にするか、化学療法を併用するかについては、(1)エストロゲン(卵胞ホルモン)受容体およびプロゲステロン(黄体ホルモン)受容体の発現状況、(2)組織学的グレード(悪性度)、(3)増殖能、(4)リンパ節転移、(5)腫瘍周囲の脈間浸潤、(6)病理学的腫瘍径、(7)患者の嗜好、(8)多遺伝子発現解析法――などの項目を検討して、総合的に判断します。(8)の多遺伝子発現解析法とは、がん細胞の遺伝子を調べて、再発の危険性などの予後のリスクを判定する検査です。高価な検査であり、日本では通常は行われていません。

例えば、(1)の発現状況が高くて、(2)グレード1、(3)低い、(4)陰性、(5)広範な脈間浸潤なし、(6)2センチ以下、(7)化学療法に関連した副作用は避けてほしい、ということなら、ホルモン療法単独となります。(1)の発現状況が低くて、(2)グレード3、(3)高い、(4)陽性、(5)広範な脈間浸潤あり、(6)5センチより大、(7)使用可能な治療法はすべて用いてほしい、ということならホルモン療法と化学療法を併用します。

また、ホルモン療法は、現在閉経しているかどうかで使用する薬剤がかわってきます。閉経前なら抗エストロゲン薬剤のノルバデックス(一般名タモキシフェン)を使用します。2~3年で閉経したら、アロマターゼ阻害剤にスイッチして、合計5年投与するという方法が一般的です。

52歳ですから、2年ぐらい生理がなくて血中女性ホルモン値が閉経レベルなら、最初からアロマターゼ阻害剤を選ぶこともあります。

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