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手術を勧められているが、専門医にしてもらったほうがよいか

回答者:上野 貴史
板橋中央総合病院 外科医師
発行:2009年5月
更新:2019年7月

  

早期の乳がんが発見され、手術を勧められています。しかし、外科のその先生は乳腺の専門家ではないようです。主に胃がんと大腸がんの手術をしていて、乳がんの手術はたまにする程度だそうです。乳がんの手術は乳腺外科医という乳がんなどの専門医にしてもらったほうがよいと友人はいいますが、そういうものでしょうか。その先生の評判はよいのですが、別の病院の乳腺外科医を探して、受診し直したほうがよいでしょうか。

(大分県 女性 46歳)

A 手術は容易だが、センチネルリンパ節生検法などは専門医が望ましい

胃も大腸も肝臓も乳腺も、かつては同じように外科医が手術を行っていましたが、現在では消化器外科や肝臓外科、乳腺外科などの専門科に細分化されるようになってきました。その中で、乳がんをはじめとした乳腺の手術の難易度は、最も容易な部類に入り、一般的な外科手術を行っている外科医であれば、通常、乳がんの手術は問題なくできます。ただし、乳腺の専門医であるほうが望ましいことも幾つかあります。

まず、ここ数年で施行されるようになった新しい方法であるセンチネルリンパ節生検法(乳がんが最初に転移する可能性の高い腋の下のリンパ節を1~3個切除して調べる検査)の経験が豊富な一般外科医が少ないことがあります。

センチネルリンパ節生検法を安全に行うには、少なくとも20~30例以上のトレーニングが必要とされ、それ以下の経験数では、偽陰性率が高くなるなど、技術的に問題が生じる可能性が高くなるといわれています。

センチネルリンパ節生検法の関連でいえば、迅速診断のできる病理医がいることも必須です。

また、乳がん治療は手術だけでなく術後のホルモン治療や抗がん剤治療などの内科的な治療が重要であり、症例が少ない施設だと最新の知識に追いついていない危惧もあります。

乳がんの治療のレベルは、その施設や医師が行っている抗がん剤治療の用量を調べるとほぼわかります。一流とはいえない施設や医師の場合は、標準量よりも少ない用量を用いがちです。副作用を必要以上に恐れていることがその理由ですが、それでは効果も減弱してしまいす。欧米での標準量を用いている施設は、大体信用できると思われます。

繰り返せば、乳がんの手術自体は、外科医であれば、問題なく対応できます。しかし、センチネルリンパ節生検法や抗がん剤治療などに対する知識や技術は乳腺の専門医のほうが通常はあります。以上の現状とご自身の状況と照らし合わせてご検討ください。

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