ホルモン療法で骨粗鬆症に。ノルバデックスを服用できるか
61歳の主婦です。閉経年齢は51歳で、現在、肥満気味です。副作用がひどいため、ホルモン療法を半年間ほど中断しています。一時ひどかったかゆみや発疹は軽減したのですが、現在は関節痛と骨の痛みがひどく、起き上がることも、下着の脱着もままなりません。原因はホルモン療法の副作用で、骨量が減少し、骨粗鬆症になったためのようです。ホルモン療法を受けているときの骨量は1780グラムほどでしたが、治療を中断して、カルシウムやビタミンDを摂取し、ウォーキングに励むことなどで、骨量は現在、1800~1900グラムまで回復しています。ホルモン療法の1つであるノルバデックス(一般名タモキシフェン)の服用を担当医に勧められていますが、副作用のことを考えると、ためらってしまいます。一方では、乳がんの再発も、とても不安です。ノルバデックスを服用しても問題ないでしょうか。
(静岡県 女性 61歳)
A 再発予防に加え、骨量を増やす効果も
以前受けていたホルモン療法が何かはお書きではありませんが、現在、ノルバデックスを勧められていることを考えると、きっと何らかのアロマターゼ阻害剤を内服していたのだと思います。
アロマターゼ阻害剤を服用すると、副作用として、骨量が減少することがしばしば起こります。ただ、骨粗鬆症にまで発展すると、カルシウムとビタミンDを摂取するだけでは、治療として不十分で、原則的には、ビスホスホネート製剤による治療を行うことが勧められます。
ビスホスホネート製剤には内服薬と点滴があり、より確実に効果が期待できるのは点滴です。点滴用ビスホスホネート製剤にも幾つかの種類がありますが、そのうちのゾメタ(一般名ゾレドロン酸)は選択肢の1つになります。ゾメタによる治療を半年に1度程度行うことで、骨量の減少を予防できるというデータがあります。カルシウムやビタミンDを摂取しながら、ゾメタによる治療を受けると、骨量が回復することも期待できると思います。また、ホルモン剤とゾメタを併用すると、がんの再発を予防する効果も高まるというデータもあります。
以上のことから、アロマターゼ阻害剤を今後再び内服する場合は、何らかのビスホスホネート製剤を併用したほうがよいと考えられます。ただし、関節痛は、骨量減少とは関係ないアロマターゼ阻害剤に特有の副作用であり、ビスホスホネート製剤を併用しても、関節痛は改善しない可能性があります。関節痛がひどい場合には、ホルモン剤をノルバデックスに変更するのが妥当かもしれません。
ただしノルバデックスには、子宮体がんと血栓症を増加させる副作用があります。しかし、その割合は多くなく、ノルバデックスを服用することで得られる乳がんの再発を予防するメリットのほうがずっと大きいといえます。また、ノルバデックスには骨量を増やす効果もあるため、その点でも、ノルバデックスはご相談者に適していると考えられます。