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乳房全摘後、抗がん剤治療を受けた。放射線治療も必要か

回答者:川端 英孝
虎の門病院 乳腺内分泌外科部長
発行:2008年4月
更新:2013年11月

  

2007年の7月に右乳房の乳がんと診断され、8月から約6カ月間、術前抗がん剤治療を受けました。ホルモン受容体、HER2受容体は共に陰性でした。その後、右乳房の全摘出手術を受け、手術は成功しました。2個のリンパ節転移があると言われました。今後は放射線治療を検討しているといわれましたが、抗がん剤治療と全摘手術を受けたのに、まだ治療が必要なのでしょうか。抗がん剤治療の副作用がかなりきつかったこともあり、これ以上の治療には不安な気持ちがあります。この放射線治療は受けたほうがよいのでしょうか。受けた場合のメリットとデメリット(副作用や後遺症)などについて教えてください。

(新潟県 女性 53歳)

A きついかもしれないが、放射線治療を考慮してほしい

手術後の放射線治療は乳房温存手術とのセットで用いられるという印象が強いですが、乳房全摘手術後であっても、リンパ節転移が4個以上あったり、腫瘍が5センチ以上ある場合は、原則として胸壁に放射線照射を行います。こうした条件の患者さんは手術後の局所再発率が高いため、放射線照射を行ったほうが局所再発の防止とともに、生存率も向上するというデータがあるためです。

また最近は、リンパ節転移が1~3個の方でも放射線治療を行ったほうが治療成績の改善がみられるというデータも出ています。このため、今後はさらに乳房全摘後の放射線治療の適応が広がるかもしれません。なお、こうしたデータはまず手術を行うことが前提の話であり、術前に抗がん剤をやった方の場合はデータ不足で、これまでのデータから類推して治療法を考えることになります。

さて、この方の腫瘍はER、PR、HER2のいずれもが陰性のいわゆるトリプルネガティブタイプで、比較的、悪性度の高いタイプです。もともとの腫瘍の大きさ、組織学的異型度、核異型度、化学療法にどの程度反応したかなどの基本的な情報が記載されておらず、この点からも放射線治療をすべきかどうかはお答えしにくいのが正直なところです。

放射線治療の功罪については、メリットとしては局所再発の予防と、10年生存率の改善が期待できるという点が挙げられます。デメリットとしては手術をした側の上肢のリンパ浮腫や、放射線性肺炎、皮膚の色素沈着や浮腫などが挙げられます。これまで半年間、抗がん剤治療を行い、さらに手術をした後なので、精神的にも肉体的にも疲弊して、これ以上の治療は不安だという心情は理解できます。しかし、ご相談者のタイプの腫瘍の治療はホルモン療法もハーセプチンも適切でないため、放射線治療の適応があるなら、もうひとがんばりしてほしいと思います。

ER=エストロゲン受容体、PR=プロゲステロン受容体

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