乳房温存手術か、乳房全摘手術後に再建か
先頃、乳がんと診断され、比較的早期のがんで、乳房を4分の1ほど切除して、ホルモン療法と放射線治療を行えば、治る可能性は高いと言われました。一方、同じく乳がんになった友人は乳房の全摘手術後、再建手術を受けています。彼女の乳房を見せてもらいましたが、外見上は手術を受けたことがまったくわかりません。乳がんを治したいのはもちろんですが、それとともに、乳房の形もできるだけ崩れないことを願っています。治る可能性と見た目(外見上の変化)の双方から、どのような治療法を選択するのがよいのか、アドバイスをお願いします。
(広島県 女性 37歳)
A 美容を考えても、通常は温存手術が一般的
乳房再建手術を受けた方で、手術を受けたかどうかわからないほど傷がきれいだという話は、これから手術される方にとっては非常に魅力的だと思いますが、そこまでの仕上がりになることはかなり稀で、通常は乳房温存手術に美容面で劣ります。
また、手術の大変さや費用、要する時間のいずれをとっても、全摘して再建するほうが負担は大きいため、美容面だけにとらわれて全摘・再建を選択するのは得策ではないと思います。
乳房温存手術後の美容面は、乳腺の切除量と部位によって決まります。乳腺の4分の1切除が勧められているようですが、腫瘍が小さく乳管を通じてのがんの広がりが限局的なら、切除範囲をもっと縮小できると思います。乳管内にがんの広がりがあるため、やむをえず広範囲に乳腺を切除する必要があるなら、4分の1程度の切除もやむをえないでしょう。
通常、外側、上部の場合は、乳房が比較的、変形しにくいため、まず乳房温存手術をすることを前提に考えるとよいと思います。腫瘍のタイプによっては、抗がん剤を先に行うことも選択肢になります。腫瘍の広がりや、患者さんの体型を総合的に判断して、乳房全摘、再建手術のほうがより合理的と判断されれば、再建の方針もよいと思います。
乳房温存術後の美容面は元々の体型と切除量、切除部位で決まりますが、手術を受ける方のうち約60パーセントの方は乳房温存の方針でそれほど議論の必要はないと思います。20パーセント程度の方は誰が診ても乳房全摘が望ましく、残り20パーセントの方がどちらがよいか微妙で、担当医によって判断が分かれるでしょう。
文面からは、乳房再建への期待がやや強いように感じます。もう少しバランスのとれた判断をされたほうがよいかもしれません。