家族性乳がんについて知りたい
私の母は50歳のとき、乳がんを発症し、手術を受けました。母の母も50歳前後に、乳がんになり、亡くなっています。最近、友人から乳がんには家族性乳がんと呼ばれるタイプがあると聞きました。私も乳がんの発症の危険性が高くなるのではないかと不安です。家族性乳がんの場合、発症の危険性はどの程度高くなるのでしょうか。また、検査方法や、治療法、予防法についても教えてください。
(大阪府 女性 29歳)
A 家族性乳がんの一般的な定義
一般に、家系の中に乳がんの人が複数いる場合を「家族性乳がん」と呼びます。家族は食生活などの生活環境も共有するので、遺伝的な原因ではなくても家系内に同じ病気を発症する人がいることがあります。
家族性乳がんは、以下のように定められています。
(1)親、子、兄弟姉妹の中に、乳がんに最初にかかわった人を含めて3人以上の乳がん患者さんがいる場合
(2)親、子、兄弟姉妹の中に、乳がんに最初にかかわった人を含めて2人の乳がん患者さんがいて、その2人のうちのどちらかが、
[1]40歳未満で乳がんを発症している
[2]左右両側に乳がんを持っている
[3]乳がん以外のがんにもかかっている
のうちのどれかに該当する場合です。
家族性乳がんの場合、一般の1.5~3倍の乳がん発症リスクがあるといわれています。
ご相談者は、(1)(2)にあてはまらないようなので、定義上は家族性乳がんではありません。あまり神経質にならないでいいようです。
一般の方と同じように、40歳すぎから定期検診を受けて、早期発見に努めてください。
ちなみに、家族性乳がんのうち、遺伝子の変異が明らかで子どもに受け継がれるものを「遺伝性乳がん」と呼びます。
最近の研究で、乳がんに強く関係する遺伝子が2つ見つかっています。がん抑制遺伝子のBRCA1、BRCA2です。これらの遺伝子は、もともと乳がんの増殖を抑える役割をしていますが、これに異常が起こるために乳がんになりやすくなります。この2つの遺伝子を持っている人は、欧米では乳がん患者さんの10~20人に1人ぐらいといわれています。
日本人では詳細はわかっていませんが、それと同じか、やや少ないと考えられています。日本では、遺伝子診断や、遺伝性乳がんに対する予防的な治療は行われていません。