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妊娠中、出産後の乳がんの治療法は?

回答者:川端 英孝
虎の門病院 乳腺内分泌外科部長
発行:2007年11月
更新:2013年11月

  

妊娠5カ月の主婦です。右の乳房にがんが見つかり、温存手術を受けました。がんの大きさは2.5センチで、リンパ節転移はありませんでした。がんの悪性度はグレード3です。「ホルモン療法は、妊娠中は避けて、出産後に受けるように」、そして「抗がん剤治療は必要ではなく、放射線治療は出産後に検討しましょう」と言われました。これで問題ないのでしょうか。また、生まれてくる赤ちゃんにがんが移ることはないのでしょうか。無事に出産できるか不安です。出産後の注意点も教えてください。

(北海道 女性 38歳)

A 放射線治療は出産後に。薬物療法の際は授乳を中止

文面だけでは不明な点もあります。妊娠中期の病期2Aの乳がん、ホルモン受容体は陽性、組織異型度はグレード3と考えてお答えします。

妊娠中の方に乳房温存療法を施行した場合、胎児への危険を考えると、放射線治療は出産前は行えないという問題があります。そのため、放射線治療が遅れることを危険と判断するなら、乳房全摘が選択されます。しかし、ご相談者はすでに乳房温存手術を受けられているので、この問題は解決済みと考えられます。そうすると、放射線治療は出産後に行うことで問題ありません。抗がん剤を妊娠中に投与することは必ずしも危険ではありませんが、十分な安全性が証明されているわけではないので、ホルモン受容体が強陽性なら抗がん剤治療は行わなくてよいと思います。仮に抗がん剤治療を行うにしても、出産後に実施したほうが現実的だと思います。

ホルモン療法は動物実験で催奇形性(奇形を生じさせる性質)が指摘されているため、妊娠中に行うことは禁忌で、出産後から行うことになります。乳がんの治療には、妊娠出産によって、前記のようなさまざまな制約が課せられますが、とくに決定的な障害はないため、1つひとつ乗り越えていく必要があります。

なお、出産に関しては特別なリスクはないと思います。また、赤ちゃんにがんが移ることはないので、そうした心配は無用です。

出産後には薬物療法を行うことになりますが、こうした場合の授乳に関する安全性は確認されていないため、抗がん剤治療を行うにせよ、ホルモン療法を行うにせよ、授乳を中止する必要があります。

なお、妊娠前期の方に関しては、堕胎の問題も考えなければなりません。妊娠を継続することで乳がんの再発が増加するという明らかなデータはなく、影響ないというのが現在の多くの専門家の意見です。このため、がん治療としての堕胎は必要ありませんが、病状の程度、予想される治療内容、社会的要因を総合的に判断して決める必要があります。

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