右乳がんで手術。身体を温めるのは再発予防にいいか?
2010年4月に右乳がんの乳房温存手術を受けました。病期2Aで、がんの大きさは12ミリ、リンパ節転移が2個ありました。抗がん剤治療は行わず、放射線治療を受け、現在はホルモン剤のフェマーラ*を服用しています。以前にも何度かご質問させていただいたのですが、新たにお聞きしたいことが3点あります。
①がんは熱に弱いと聞きましたが、本当ですか? お風呂で温めたり温泉に行ったりして、いつも身体を温めたほうがいいのでしょうか。また、再発予防にも身体は温めるなどして、冷やさないようにしたほうがいいのでしょうか。
②担当の先生に術側の背中が痛むといったら、手術で神経をいじっているからといわれました。先生からは痛い部分に湿布してもいいといわれので、何日か貼ってみましたが、まだ痛みます。痛みは、年単位かかるともいわれていますが、耐えるしかないのでしょうか。
③体重も術前は55~56キロでしたが、現在63キロあります。今のところ維持しておりますが、やはり増えないほうがいいのでしょうか。
(徳島県 女性 59歳)
A 身体全体を温めても、再発予防の効果はない
順番にお答えしましょう。①ですが、確かに温熱療法といって、がんの部分を42度ぐらいに温めて、がん細胞をたたく治療法はあります。
通常、がん細胞は正常細胞より熱に弱く、温めることによって、がん細胞は壊れやすくなります。この違いを利用して、温めることによってがん細胞を攻撃しようと考えられたのが温熱療法です。ただし、この場合、温めるのは、がんの部分、つまり局所に対して内部を温めるということであって、お風呂で温めるといった、身体全体を表面的に温めることを意味してはいません。したがって、いつも身体を温めていたほうがいいでしょうか、というご質問に対しては、がんとの関係はないといえるでしょう。局所の温熱療法も、どちらかといえばまだ研究的治療であり、昔ほどは行われなくなっています。再発予防に関しても、同じ理由で、身体を温めたからといって、再発が起こりにくくなることはないでしょう。
②ですが、ご相談者のように、手術した部位が痛むという方はときどきいらっしゃいます。この痛みに対しては、今行っているような湿布を貼るといった対症療法が主体となります。神経性の痛みが強い場合には、3環系抗うつ薬やリリカ*などの神経障害性の疼痛治療薬が処方されることもあります。
③ですが、閉経後の女性の場合、女性ホルモンの多くは脂肪細胞から放出されます。女性ホルモンはがん細胞を増殖させる可能性があります。太って脂肪細胞が増えると、女性ホルモンの分泌が高まり、乳がん細胞が増殖することが考えられます。
ですから体重増加は避けたほうが賢明です。運動などを行い、標準体重を維持するよう心がけてください。
*フェマーラ=一般名レトロゾール *リリカ=一般名プレガバリン