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ホルモン補充療法は再発リスクを高めるか?

回答者:上野 貴史
板橋中央総合病院 外科医師
発行:2011年11月
更新:2014年1月

  

42歳のときに右乳房に3ミリのがんが見つかり、手術のみを受けました。その後、再発もなく今に至っていますが、2~3カ月前から汗が異常に出たり、急に体がほてって暑くなったりと、更年期障害の症状が出て、困っています。地元の内科医に相談したところ、ホルモン補充療法を行うことを勧められました。ただ、色々調べてみると、ホルモン補充療法が、乳がんの再発リスクを高めることがあると知り、受けるかどうか迷っています。ホルモン補充療法は行わないほうがいいのでしょうか。

(三重県 女性 54歳)

A 再発リスク高まる恐れ。勧められない

結論から申しますと、ご相談者が心配されているように、乳がんを発症した人がホルモン補充療法を行うと、再発リスクが高まる恐れがあります。ですので、ホルモン補充療法は勧められません。

乳がんの再発とホルモン補充療法との関係を調べた2つの臨床試験があります。

1つは、乳がんを発症した人に、ホルモン補充療法を行った人とそうでない人とを比較したHABITS試験と呼ばれる試験で、ホルモン補充療法を行った群で3~4倍ほど、再発リスクが高まる傾向が出現したため、途中で試験中止となりました。

2つ目のStockholm試験と呼ばれる試験では、再発リスクはとくに増えないという結果でしたが、この試験では黄体ホルモンを極力つかわず、卵胞ホルモンのみのホルモン補充療法を行うという方法でした。通常、ホルモン補充療法というと、卵胞ホルモンと黄体ホルモンの両方を補充する方法が一般的ですが、Stockholm試験では、原則、卵胞ホルモンのみを補充する単独療法だったのです。

では、卵胞ホルモンのみの単独療法ならいいのでは、と思われるかもしれませんが、卵胞ホルモンのみの単独療法では、子宮体がんの発症リスクが高まることが明らかになっており、勧められません。

乳がんではない人に対しても、ホルモン補充療法は、乳がん発症リスクを高めるだけでなく、血栓症のリスクを高めることが明らかになったため、最近ではあまり行われなくなってきています。

ホルモン剤以外の治療薬としてパキシル、ガバペン、さらにはカタプレスといった薬が更年期症状のほてりに有効ですので、これらの薬剤を試してみるのが安全でしょう。ただし副作用があり得るので、ほてりの程度が強い場合にのみ使用するのがよいかもしれません。

ただし、パキシルにはホルモン剤のノルバデックスの効果を抑えてしまうので、ノルバデックスを服用されている方は使用できません。

はっきりとは証明されていませんが、更年期障害の症状緩和として、ハーブ、ビタミンEが有効な場合もあるようです。

パキシル=一般名パロキセチン ガバペン=一般名ガバペンチン カタプレス=一般名クロニジン ノルバデックス=一般名タモキシフェン

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