30年経て乳がんの転移が胸壁に
30年前、42歳のとき乳がんと診断され、左乳房全摘手術を受けました。術後、ホルモン療法を2年間、UFTを4年間服用しました。47歳でリンパ節転移、49歳で局所再発とそれぞれ手術しました。以降、何の問題もなく経過しましたが、今年の6月、左胸にしこりを感じて受診したところ、胸壁の2カ所に転移が見つかりました。
病理検査の結果、浸潤性乳管がんで、ホルモン受容体陽性、HER2陰性でした。また肺や肝臓への転移はありませんでした。主治医からは手術で取り除くことは出来ないと言われ、ホルモン療法のフェソロデックスと分子標的薬のベージニオによる治療を勧められました。今後の治療はこれでいいのでしょうか。また、もう少し早く再発が見つかっていれば治療法も変わっていたのでしょうか。
(72歳 女性 京都府)
A 薬物療法が中心になることに変わりはない
乳腺外科医長の上野貴史さん
ホルモン療法で、筋肉注射のフェソロデックス(一般名フルベストラント)を行うとのことですが、一般的には経口薬のアロマターゼ阻害薬を使用することのほうが多いと思われます。CDK4/6阻害薬(ベージニオやイブランス)を併用するほうが、ホルモン薬単独よりも効果が長く持続するため、ホルモン薬との併用が薦められています。
主治医からは初回からの併用が薦められていますが、まずはアロマターゼ阻害薬だけを使用し、効かなくなったらCDK4/6阻害薬+フェソロデックス併用するという方法が、副作用が少ないため、高齢者や症状のない方にオプションとして行われていました。
2023年の米国臨床腫瘍学会(ASCO)で、オランダで行われた 「SONIA試験」の報告がありました。その報告によると、このオプションでも治療効果は劣らないという結果でした。ですからご相談者の年齢を考えれば、最初はアロマターゼ阻害薬だけで様子を見るという選択肢もあります。また胸壁転移であれば、多少早く発見されても薬物療法が中心となることに変わりはありません。時期をみて放射線照射を加える場合もあります。