肺、骨、肝臓、腹部リンパ節多数転移。完治(根治)は可能でしょうか?
2015年4月、右乳房にがんが見つかり、全摘手術を受けました。ルミナルA、リンパ節36個中、35個転移があり、ステージⅢc。
6月抗がん薬(AC療法:アドリアマイシン+シクロホスファミド併用療法)、9月放射線治療。BRCA2陽性、遺伝性乳がん。
2018年9月、PET検査で再発確認。肺、骨、肝臓、腹部リンパ節多数転移。*イブランス(一般名パルボシクリブ)と*フェソロデックス(一般名フルベストラント)、*ランマーク(一般名デノスマブ)注射、*デノタス(一般名沈降炭酸カルシウム・コレカルシフェロール・炭酸マグネシウム)服用。
11月肝臓増悪(大きいものが1.5㎝)。12月肝臓増悪(肝臓全体に数えきれないほどの腫瘍の影あり)、イブランスとフェソロデックス中止、ランマークとデノタスは続行。*リムパーザ(一般名オラパリブ)服用開始。
そこでご相談です。この状況から完治(根治)に持っていくにはどうしたらいいでしょうか。再発したときから抗がん薬を使用するべきなのではと考えていましたが、主治医がまずは服薬からということで今に至っています。今のQOL(生活の質)を落としたくないという思いで踏み切れなかった自分もいます。リムパーザが効かなければ抗がん薬になると言われていますが、いま体力があって肝臓も元気なうちに抗がん薬をするべきではないかというのと、他の手段(ラジオ波焼灼術とか外科的治療)はないのでしょうか。
(42歳 女性 愛媛県)
A 残念ながら完治(根治)は望めない
乳腺外科医長の上野貴史さん
まずご質問者の場合、肝臓に数えきれないほどの腫瘍があって完治(根治)にもっていくことは可能でしょうか、とのご相談ですが、これはハッキリ言って不可能です。ご本人が自覚されていないようですが、このご質問者の現在の状況は life-threatening(生命の危機)と考えられ、ほとんど末期に近い状態なのです。
また、他の手段(ラジオ波焼灼術とか外科的治療)があるかとのお尋ねですが、乳がんの肝転移には手術適応はありません。ホルモン薬も効かなくなっており、抗がん薬治療を行うのが妥当です。完治(根治)のためではなく、生命の危機を脱するためです。
主治医の方はこのご質問者に再発が見つかった時点で、まず完治(根治)は難しいと説明すべきなのですが、何も言ってないか、患者さんがその説明を理解していないかのどちらかと思われます。
主治医は、例えいくら心苦しくても、遠隔再発が見つかったならば、その時点で、完治(根治)は無理だということを伝えるべきです。国際的な進行・再発乳がん治療のABC会議(コンセンサス会議)でも、再発が見つかった時点で、患者さんに根治不能だと伝えるべきだという意見にパネリスト全員が賛成していました。これからの治療については透析患者や糖尿病患者、慢性呼吸器疾患患者の例を引いて、治ることはないけれども延命は出来るというような説明が必要です。