トリプルネガティブ乳がんは、どのような治療法がよいか

回答者:上野 貴史
板橋中央総合病院 外科医師
発行:2009年9月
更新:2014年1月

  

右乳房に張りを感じ、病院で診てもらったところ、乳がんとわかりました。かなり進行していて、手術は難しいといわれました。また、いろいろな検査をした結果、エストロゲン受容体、プロゲステロン受容体、HER2のすべてが陰性で、トリプルネガティブの乳がんとの説明を受けています。私のようなトリプルネガティブの乳がんには、どんな抗がん剤治療がよいのでしょうか。

(香川県 女性 50歳)

A 抗がん剤の組み合わせが標準

トリプルネガティブ乳がんとは、乳がん細胞に女性ホルモンのエストロゲン受容体とプロゲステロン受容体、HER2タンパクの3つの因子が陰性の場合のことをいいます。

基底様(Basal-like)乳がんとして分類されるタイプに属することが多く、遺伝性乳がんの原因遺伝子であるBRCA1に異常がある乳がんの性質がトリプルネガティブに近いものがあるといわれています。

トリプルネガティブは、乳がん全体の10~15パーセントを占めます。ホルモン剤や分子標的薬が効かないため、抗がん剤が唯一の全身治療となります。

臨床的に性質の悪いものが多く、他のタイプの乳がんより予後不良の傾向があります。トリプルネガティブ乳がんは、抗がん剤が効きやすいことがわかっています。現時点では、通常の乳がんに使われている抗がん剤を用いた治療を行います。アドリアシン(一般名塩酸ドキソルビシン)やファルモルビシン(一般名塩酸エピルビシン)などのアントラサイクリン系の抗がん剤に対する効果が高いといわれ、治療の中心薬となります。それに、タキサン系の抗がん剤を組み合わせた治療を行うことが標準です。

BRCA1異常があるとDNA障害性の抗がん剤(カルボプラチン(一般名)などの白金製剤)により感受性が高いことがわかっており、白金製剤の効果をみる臨床試験が多く行われています。白金製剤は、乳がんに対する保険適用はありません。

また、トリプルネガティブ乳がんの6割でEGFR(上皮成長因子受容体)遺伝子の過剰発現がみられ、3割でc-KIT遺伝子(がん遺伝子)の異常がみられることから、これらに対する分子標的薬の効果をみる試験も行われています。

正常細胞に害が少ないとされるPARP阻害剤(がん細胞のDNA修復を阻害することでがんを死滅させる)も有望とされます。最近の米国の臨床試験では、タキサン系の薬剤のイグゼンプラ(一般名イキサべピロン。日本でも保険適用申請中)とゼローダによる併用療法が、トリプルネガティブの無進行生存期間を延長できたという報告もあります。これらは、いろいろな臨床試験の1つです。

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