タイケルブとアバスチンの臨床データは?

回答者:上野 貴史
板橋中央総合病院 外科医師
発行:2008年5月
更新:2014年1月

  

乳がんにおける分子標的治療であるタイケルブ(一般名ラパチニブ)とアバスチン(一般名ベバシズマブ)の臨床データがあれば教えてください。休眠療法をしながらすることはできますか。

(埼玉県 女性 53歳)

A タイケルブ+ゼローダなどの効果が確認されている

2006年12月に発表された国際的な臨床試験の結果、タイケルブとゼローダ(一般名カペシタビン)の2剤併用療法は、ハーセプチン(一般名トラスツズマブ)が効かなくなった人に対して、ゼローダ単剤よりも奏効期間を延長することがわかりました(8.4カ月対4.4カ月)。

タイケルブは、HER2に加え、HER1もブロックし、低分子であるため、ハーセプチンと違って脳にも届き、脳転移のある患者さんにも効果があるのではないかと期待されている経口剤です。アメリカではゼローダとの併用薬として既に認可されていますが、日本でもまもなく認可される見込みです。

アバスチンに関しては、2007年12月に質の高いデータが発表されました。再発患者の初回治療で、タキソール(一般名パクリタキセル)単剤とタキソール+アバスチンを比較した臨床試験があり、その結果、タキソール+アバスチンには奏効期間を延長する効果があることが確認されました(11.8カ月対5.9カ月)。ただし、タキソール単剤に比べて、最終的な生存期間に関しては明瞭な差はつきませんでした。

また2005年2月には、再発患者のサードライン(3つ目の選択肢)の治療としてゼローダ単剤とゼローダ+アバスチンの比較試験が行われました。その結果、奏効率はゼローダ+アバスチンのほうがよかったのですが(9.8パーセント対19.8パーセント)、奏効期間の延長や最終生存期間の延長には有意差がありませんでした。日本ではアバスチンは大腸がんの治療には承認されましたが、乳がんに対しては未承認です。

休眠療法については詳しくありませんが、これがもし「低用量の抗がん剤を投与して、継続的に治療を行い、がんとの共存を目指す治療法」という意味なら、タイケルブやアバスチンと併用しても構わないと思います。ただし、タイケルブもアバスチンも現在、日本では乳がんに対して承認されていません。

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