タイケルブの効果、副作用について教えてほしい
左乳房にがんが見つかり、近くの病院で乳房の全摘手術を受けました。術後、ハーセプチン(一般名トラスツズマブ)が効くかどうかを調べるHER2検査を受けましたが有効性ははっきりしませんでした。そこで、再発予防のためにUFT(一般名テガフール・ウラシル)による治療を受けました。ところが、術後2年目に左の脇の下にしこりができ、リンパ節転移とわかりました。肝臓への転移も、見つかりました。住まいが変わったため、病院も変わりました。新しい病院で再度、HER2検査を受けた結果、3プラスの陽性とわかり、ハーセプチンとタキソール(一般名パクリタキセル)の併用治療を始めました。経過は順調ですが、ハーセプチンはいずれは効かなくなると言われています。最近、タイケルブ(一般名ラパチニブ)が使われるようになったと聞いています。この薬の効果、副作用について教えてください。
(青森県 女性 55歳)
A 奏効率は22パーセント。脳転移にも効果があるといわれている
ハーセプチンとタキソールの併用療法が効かなくなった場合、ハーセプチン投与をやめて抗がん剤治療単独だけにする方法とハーセプチンは続行し、抗がん剤の組み合わせを替えていく方法のどちらがよいのかが議論されていましたが、後者のほうがよい成績が得られたという報告が多く、一般的になっています。
タキソールに替えてナベルビン(一般名ビノレルビン)や、ゼローダ(一般名カペシタビン)を併用します。
アントラサイクリン系との併用は心障害が強く出るため、あまり使用されません。
相談者の場合、ハーセプチンとナベルビンの併用療法、もしくはハーセプチンとゼローダの併用療法に切り替えることが標準です。
タイケルブは、HER2検査が陽性の人にゼローダとの併用で認可された経口分子標的薬です。医療保険上、過去にゼローダを使用していた場合にはタイケルブとゼローダの併用療法はできません。
ハーセプチンとタキソールの併用療法をしているわけですから、次はハーセプチンとナベルビンの併用療法もしくはタイケルブとゼローダの併用療法のいずれかがよいと思います。どちらがよいのかは、わかっていません。
タイケルブとゼローダの併用療法の効果についてはハーセプチンと抗がん剤の併用療法が効かなくなって、タイケルブとゼローダの併用療法に切り替えた場合、奏効率が22パーセントあったと報告されています。ゼローダ単独に比べ、奏効期間が4カ月から8カ月に延びました。
ハーセプチンは分子量が大きいため脳には届かず、脳転移には効かないと言われています。一方、タイケルブは、分子量が小さいため、脳に届いて脳転移にも効果があると言われています。
タイケルブとゼローダの併用療法の主な副作用としては下痢があり、止痢剤の併用が普通です。手足の指が痛くなったり、皮がむけたりする手足症候群も50パーセントでみられます。これは、ゼローダの副作用です。また、タイケルブは他の薬物の代謝に影響することがあり、併用薬への注意が必要です。
治療費は、高額です。タイケルブは1日5錠を連日内服し、1錠1600円(3割負担で480円)します。ゼローダを併用するため、さらに負担が増えますが高額療養費制度の適用になります。