がんの進行に伴い、HER2は陰性から陽性に変わるか

回答者:川端 英孝
虎の門病院 乳腺内分泌外科部長
発行:2008年3月
更新:2013年11月

  

5年前に乳がんの手術を受けました。その後、多発性骨転移とリンパ節転移になり5年目、肺転移も見つかり2年経っています。手術後の病理検査では、ホルモン感受性はER(2+)、PgR(2+)、HER2(-)でした。現在、タキソールの治療を受けています。乳がんが進行することによって、HER2が陰性から陽性に変わることはあるのでしょうか。もし変わるとしたら、転移後の細胞の組織を採取せずに、血液検査で血清HER2タンパクを検査することで予測できるでしょうか。

(山梨県 女性 34歳)

A 年月を経て、腫瘍の性質が変化することもある

血清HER2は腫瘍組織のHER2が陽性で、再発した患者さんの腫瘍マーカー的な意味合いで治療効果判定に時折用いられています。しかし、血清HER2の陽性率はあまり高くなく、ハーセプチン治療を行うかどうかの指標としてこの検査結果を用いるのは不適切と考えられています。そして、より精度の高い方法、すなわち乳がん組織をハーセプテストかFISH法で直接調べ、この結果によって治療を行うかどうかの判断をします。

現在では、初回の手術時に必ずこの検査を行いますが、数年前よりも以前に手術を受けた方は、多くの場合、検査が行われていません。このため、再発時に昔の手術検体から検査を行います。

ただ、年月を経て腫瘍の性質が変化していることや、以前の検査が不正確な場合もありうるので、現在、リンパ節転移などが体表近くにあるなら、これを検査(針生検)してHER2の再評価をします。体表の病変がなければ、肺や骨から調べることも可能ですが、検査自体が大変なため通常はそこまでは行いません。これを補う方法として、血清HER2の検査が考えられますが、精度面で問題があるのが現状です。ただ、このところハーセプチンの効果があちこちで強調されており、少しでも可能性があるなら自分もハーセプチンを使ってみたいと考えるのは人情だと思います。

ハーセプチンの使用を乳がん組織でのHER2タンパクの過剰発現かHER2遺伝子の増殖に限定しているのは、患者さんのターゲットを絞り、無益な治療が行われないようにするためと、保険診療が崩壊しないように医療費を抑制する目的があると思います。

血清HER2が高値の場合、手術検体を再度調べ直すか、多少無理をしても再発病巣を採取して調べるなどの利用価値はあると思うので、一度、採血で調べてみるといいでしょう。ただ血液検査の結果、すなわち血清HER2の値だけでハーセプチン治療を行う場合も現実にはありますが、望ましい方法ではないことを理解しておく必要があります。

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