直腸がん手術後は、どのような検査が必要か

回答者:吉田 和彦
東京慈恵会医科大学青戸病院 副院長
発行:2007年3月
更新:2014年1月

  

66歳の父のことでご相談します。5カ月前に、直腸がんで手術をしました。幸い、肛門を残す手術を受けられて、人工肛門は避けることができました。手術後の経過も順調なようです。質問は、再発に対する取り組みについてです。手術後の検査には数多くあるようですが、具体的にはどんな検査が必要なのでしょうか。どのような間隔で受けたらよいのでしょうか。ご意見をお聞かせください。

(愛媛県 女性 38歳)

A CT、腫瘍マーカー、大腸内視鏡で定期検査を

ステージ0やステージ1の粘膜下層までのがんには、経過観察はほとんど必要ありません。ステージ1の筋層へ浸潤したがんや、最も多いステージ2~3の場合では、経過観察が必要です。ステージ4の場合には、余命が限られ、症状に対する緩和も必要となりますので、継続的なサポートが必要となります。残念ながら、現状では、大腸がん切除後の経過観察については、科学的根拠のあるデータはそれほど数多いわけではありません。

直腸がんの再発には、局所再発と全身再発とがあります。局所再発にはCTとMRI、吻合部の再発に対しては大腸内視鏡検査を用います。全身再発の多くは肝臓や肺に起こります。肝転移や肺転移は、主にCTでチェックします。局所再発と全身再発の両方のチェックには、腫瘍マーカー(CEA、CA19-9など)の測定が効果的です。

それぞれの検査をどれぐらいの頻度で行うかについては、さまざまな意見があって、決まってはいません。日本の大腸がんガイドラインでは、再発の80パーセント以上は手術後3年以内に起こるので、手術後3年間は3~4カ月に1度、問診・診察とCT、腫瘍マーカーをチェックします。それらに加えて、大腸内視鏡検査を年1回行います。

また、再発の95パーセントは、5年以内に生じるので、手術後4~5年間は、6カ月に1度のペースで経過観察を行います。直腸がんを含む大腸がんでは、局所再発でも、肝転移や肺転移を起こした場合でも、切除さえできれば、もう1度、根治に持ち込める可能性があります。この点がほかのがんとは異なります。そのため、経過観察をして、再発の早期発見と早期治療を行うことが大切だと思います。また、大腸がんになった方は、ほかのがんにもかかりやすくなっています。大腸がんの再発を目的にした経過観察を受けるだけでなく、通常のがん検診で、ほかの頻度の高いがんのチェックを行うことも大切です。

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