S状結腸がんで肺転移。手術を勧められているが…
70歳の母のことでご相談します。大腸内視鏡検査でS状結腸がんと言われました。その後の検査で、肺転移も指摘されました。主治医からは「S状結腸がんと肺のいずれも切除可能です」と言われて、手術による切除を勧められています。しかし、結腸だけでなく肺も手術で切除するとなると、身体的な負担が大きいと思います。できれば、手術よりも身体に負担のかからない治療法を選びたいと思います。手術以外の治療法の可能性とその有効性について、教えてください。
(福井県 女性 44歳)
A 同時手術がベスト。肺手術をしない場合も結腸は切除する
ご相談者の場合、S状結腸がんだけでなく、肺転移も切除することで、根治する可能性があります。S状結腸と肺転移との同時手術が可能なら、その治療選択がベストかもしれません。
この同時手術は、消化器外科の外科医が大腸の手術をしてからすぐに、胸部外科の肺がん専門の外科医が肺がんの手術を行います。S状結腸の手術は、開腹手術もしくは腹腔鏡手術で行います。後者の手術のほうが、身体への負担は多少軽くなります。最近では、肺転移に対しては胸腔鏡を用いた手術も行われるようになりました。この胸腔鏡手術は、胸を切開して行う開胸手術よりも傷口が小さく、身体への負担も軽くできると思います。
ただし、病院によっては、医療スタッフ体制などシステム上の問題などで、同時手術を行えないこともあります。そんな場合には、最初にS状結腸を切除し、お腹の傷が癒えた1カ月ほど後に、肺の切除手術を行います。
一方、肺転移の手術を行わないと決めた場合でも、S状結腸がんの手術はすべきです。S状結腸を切除しないでそのまま放置すると、がんが進行して腸閉塞を起こします。食事ができなくなって、生活の質(QOL)が落ちてしまうからです。
また、肺転移の切除を行わないときは、ステージ4ですので、余命は最短で半年から1年ぐらいになります。そのときの治療は、全身化学療法です。5-FU(一般名フルオロウラシル)とアイソボリン(一般名レボホリナート)、エルプラット(一般名オキサリプラチン)の3剤を併用するFOLFOX療法、もしくは5-FUとアイソボリン、カンプト(またはトポテシン。一般名イリノテカン)の3剤を併用するFOLFIRI療法などを行います。
ただし、これらの最新の化学療法を行っても、平均的には生存期間を半年から1年ほど延長させるだけですし、一方、副作用により残された人生の生存の質は低下します。これらのことを前提として、治療選択をしていただければと思います。