Ⅳ期の診断。今後の治療選択に迷い

回答者・出江洋介
都立駒込病院食道外科部長
発行:2014年4月
更新:2014年7月

  

食道がんのⅣ期とわかりました。内視鏡検査で、食道下部に腫瘍があり、8㎝ほどの大きさになっていること、またリンパ節転移も疑われることから、手術はできないと言われました。今後の治療法は、化学療法と放射線治療があると言われました。

私自身、突然のがんの宣告で動揺していて、今後についての正確な判断ができませんが、がんがここまで進んでいる以上、治る見込みがあるのならばどんな治療も頑張って臨みたいと思うのですが、もし治る見込みがないのであればきつい治療はできるだけしたくありません。

そこで、私の病期と年齢から考えて、どのような治療だと希望が持てるか、アドバイスをお願いします。

(37歳 女性 山梨県)

Ⅳ期でも根治を目指す治療はできる

都立駒込病院食道外科部長の出江洋介さん

以前なら、Ⅳ期の食道がんは諦めるしかない場合が多かったのですが、今は化学療法、放射線治療共に効果を上げており、また手術も鏡視下手術と、新しい術式により、身体の負担を大幅に軽減した治療を行うことができるようになっています。

ご相談者のように、腫瘍の大きさが8㎝であっても、遠隔転移がないのであれば、化学療法、放射線治療、手術を組み合わせた治療を行うことで、たとえⅣ期であったとしても、根治を目指す治療を行うことはできます。まずは諦めずに治療を進められることをお勧めします。

Ⅳ期の場合、いきなりきつい治療をするのではなく、まずは化学療法をやってみて、それを続けていけることが重要になります。化学療法で使用する薬剤は、5-FUとシスプラチンの併用が第1選択として使用されます。それにタキソテールを用いたり、当院ではアドリアマイシン、ネダプラチンも併せて使用する場合もあります。第1選択薬でたとえ効果が得られなくなっても、第2選択として使える薬剤が増えたのも、Ⅳ期の生存率を延ばす要因になっています。

抗がん薬の効き方によって、状況も一気に変わってきます。遠隔転移を抑え、さらに放射線治療を組み合わせていくことにより、腫瘍部分の局所コントロールができたら手術に持ち込み、腫瘍の切除を行います。

当院では食道がんのⅢ、Ⅳ期の場合、それぞれの患者さんの身体の状況、化学療法や放射線治療の効き具合、また副作用の出方を見ながら次の治療を考えていきます。いわばそれぞれの患者さんに合わせた個別的治療です。進行した食道がんの場合は、そういった治療戦略を行いながら、化学療法も放射線治療も、手術も用いる集学的治療で、治る可能性を上げていきます。

ですので、たとえⅣ期であっても目標は「根治」なのです。その結果、Ⅳ期の患者さんでも5年生存率は30%と、高い成績も出てきています。

ご相談者の年齢であれば体力もあるので、希望を捨てずに治療を受けていかれることをお勧めします。

5-FU=一般名フルオロウラシル シスプラチン=商品名ブリプラチン/ランダ タキソテール=一般名ドセタキセル アドリアマイシン=一般名塩酸ドキソルビシン ネダプラチン=商品名アクプラ

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