密封小線源療法や分子標的薬は有効か
病理検査で舌がんのⅡ期と診断されました。メスを入れたくなく、放射線治療もあると医師に言われました。密封小線源療法や、分子標的薬という言葉をインターネットで知りましたが、詳しい内容を教えて下さい。
(53歳 男性 長野県)
A ケースごとに特徴を生かした使い分け
岸本誠司さん
腫瘍が2~4㎝で転移がない段階がⅡ期です。Ⅰ期からⅡ期の前半で、深く組織に入り込んでいなければ、放射線治療も可能です。
舌がんでは放射線を外から照射する方法は有効ではないので、密封小線源療法がとられます。イリジウムなど放射性金属を小さな針や粒にして舌に埋め込みます。
埋め込む小線源の数はがんの大きさや範囲によりケースごとに決められます。手術と同じくらいの有効性があるとされています。
デメリットとしては、放射性のあるものを体内に入れるので、体や排泄物などが放射性を帯びてしまいます。そのため、放射性金属を抜くまでは、病院の特殊な部屋で隔離された生活をしなければなりません。さらに患部がただれてきて痛いなど、つらい面もありますが、切らないで済むので、治療が終われば、外見は変わらないし、舌の動きも悪くなりません。
保険は効きますが、一部の施設でしか行っていません。しかも、2011年の福島原発事故以来、小線源自体の供給がほとんどなくなってしまいました。それに伴い、密封小線源療法を数多くやっていた東京医科歯科大学附属病院でも治療を中断していましたが、今年(2014年)の7月から再開の予定です。
次に、分子標的薬ですが、2013年に*アービタックスが頭頸部がんにも適応拡大されました。分子標的薬は、単独で使うと力が弱いので、放射線療法と組み合わせることが多いのですが、舌がんは外からの放射線療法があまり効かないこともあり、頭頸部がんへの適応拡大といっても、咽頭がん、喉頭がんに使われることが多い状況です。
分子標的薬は、単独で治り切るものではありません。手術で切除できないほど進行した場合に、放射線と併用したり、再発・転移したときに救済(サルベージ)治療として使うことがあるということです。
分子標的薬のメリットは、副作用が抗がん薬よりも少ないことが挙げられます。抗がん薬は高齢者やいろいろな合併症を持った患者さんには使いにくかったのですが、分子標的薬はそういった方にも使うことができます。
*アービタックス=一般名セツキシマブ