早期の下咽頭がん。「口の中から行う手術」とは

回答者・林 隆一
国立がん研究センター東病院副院長/頭頸部外科長
発行:2015年10月
更新:2016年1月

  

検診で胃の内視鏡検査を受けたとき、のどの奥の側壁の部分にがんが見つかり、下咽頭がんと診断されました。早期なので医師から「口の中から行う手術」をすることが可能だと言われたのですが、どのような手術でしょうか。嚥下機能や発声への影響についても教えてください。

(58歳 男性 神奈川県)

経口的内視鏡手術のこと。嚥下や発声の機能に問題はない

国立がん研究センター東病院
副院長の林 隆一さん

「口の中から行う手術」とは、口から内視鏡を挿入して病変部を切除する手術のことです。近年NBI(狭帯域光観察)や拡大鏡などの特殊な付加機能を有した内視鏡技術の発達により、早期の頭頸部がんを発見できるケースが多くなりました。また、食道がんの患者さんは咽頭がんを合併しやすいことがわかっているため、食道がんの検査から頭頸部がんが発見されるケースも多くなっています。

ご相談者の場合、がんが深いところにある筋肉(固有筋層)まで浸潤していない「表在がん」であったため、経口的な切除術が選択できるということです。経口的切除術には、食道や胃など消化器系のがんで行われているEMR/ESDとELPS、TOVSがあります。TOVSやELPSは進行している場合にも行われます。ただし、どの施設でも行えるわけではないので、主治医とよく相談してください。

これらの手術は皮膚を切開せずに病変を切除できるため、通常の手術よりも侵襲が少ないのが特徴です。切除範囲が狭ければ自然に治癒し、嚥下機能や発声機能への影響もほとんどありません。

EMR/ESD=内視鏡的粘膜切除術/内視鏡的粘膜下層剥離術 ELPS=内視鏡的咽喉頭手術 TOVS=経口的ビデオ喉頭鏡下手術

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