Ⅲ期の上顎歯肉がん。超選択的動注化学放射線療法とは?

回答者:藤内 祝
横浜市立大学大学院 医学研究科顎顔面口腔機能制御学教授
発行:2013年1月
更新:2014年1月

  

歯槽膿漏と思いそのままにしておいたのですが、腫れが長い間治まらなかったので診てもらったところ、Ⅲ期の上顎歯肉がんと診断されました。医師は、腫瘍の大きさは2㎝で、外科手術をすると、手術後「話す」「飲み込む」「噛む」といった機能に後遺症が残るといわれています。そのようなとき、インターネットで超選択的動注化学放射線療法という治療法を知りました。全身のダメージが少ないということなのですが、この治療法は、具体的にはどんな治療なのでしょうか?

(岩手県 男性 58歳)

A 機能障害が出ずに、効果が期待できる治療法

口腔がんは、患者さんが審美障害で思い煩わないためにも、手術しないで治すことを望まれる部位です。

歯肉がんは、リンパ節転移が無い場合、腫瘍の大きさが4㎝以上でステージⅢになります。または、腫瘍の大きさが2㎝でも、リンパ節転移が1個でしたら、ステージⅢと考えます。

超選択的動注化学放射線療法のコンセプトは、QOL(生活の質)が下がらない治療、つまり切らずに治療することです。従って、発語障害、嚥下障害、咀嚼障害、といった機能障害を少しでも少なくすることを目的とします。この治療は、放射線と抗がん薬を同時併用します。超選択的動注療法は、大きく分けて鼠径部の大腿動脈よりカテーテルを入れる従来の方法と浅側頭動脈のような末梢動脈よりカテーテルを入れる方法があります。どちらも一長一短がありますが、従来法は入れたカテーテルをその日のうちに抜く必要がありました。また、カテーテルが総頸動脈を通る際、内頸動脈のほうに血液の固まりが流れて、脳梗塞などを引き起こす危険性も考えられました。

それに対して、新しい超選択的動注化学放射線療法は、耳の前に流れる浅側頭動脈からカテーテルを入れて、腫瘍部分だけを狙って、抗がん薬を集中的に投与します。

抗がん薬として、タキソテールは体表面積あたり60mg、シスプラチンは体表面積あたり100~150mgを注入します。およそ6週間かけて、抗がん薬を注入していきます。放射線は、1日2グレイずつ、計40~60グレイ照射します。

この治療法は、カテーテルを浅側頭動脈経由で留置できるので、毎日治療を継続できます。また、カテーテルが心臓を通らないので、安全性が高いのです。しかし使用できる栄養動脈が舌動脈、顔面動脈、顎動脈に限られるのが欠点です。

腫瘍は、約9割が縮小します。5年生存率で考えると、ステージⅢ、Ⅳでおよそ70~75%です。

通常、抗がん薬は静脈注射で投与しますが、この治療法だと、薬剤が腫瘍部分に届くまでに薄まってしまいます。

しかし、超選択的動注化学放射線療法ですと、抗がん薬が高濃度で腫瘍部分に届きます。静脈注射と比べると、腫瘍部分に届く抗がん薬の濃度に数倍以上の差ができるのです。

副作用は、舌に直接的に抗がん薬を送り込むので、強い口内炎があります。ほぼ必ず口内炎ができてしまうのが、デメリットといえます。逆に、口内炎が強いことは、腫瘍部分に、抗がん薬が効いているということです。口内炎は、治療終了後、約半年かけて治癒に向かいます。

口内炎の対策としては、口腔ケアがあります。がんになると、原則的に口腔内の歯に付けた金属を取り外します。これは、口内炎予防の1つの方法です。

放射線が散乱すると、口内炎がひどくなるために、できるだけ原因となる金属を取り除くのです。

タキソテール=一般名ドセタキセル シスプラチン=商品名ブリプラチン/ランダ

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