3つの代用音声のメリットとデメリットは?

回答者:林 隆一
国立がん研究センター東病院 頭頸部腫瘍科・形成外科科長
発行:2011年1月
更新:2013年11月

  

3期の声門がんと診断され、手術で喉頭を全摘することになりました。「声を失うことになる」と説明され、ショックを受けています。代用音声として、「食道発声」「電気式人工喉頭」「ボイスプロステーシス」の大きく3つがあるそうですが、どの方法が1番よいのでしょうか。それぞれのメリット、デメリットを教えてください。接客業をしており、できるだけ仕事や日常生活に支障がない方法を希望しています。

(秋田県 男性 52歳)

A 食道発声が有利だが、電気式人工喉頭も改良されている

現在、日本では食道発声と電気式人工喉頭(以下、電気喉頭)の2つの方式が一般的に採用されています。

食道発声は、3方式のなかでは唯一両手がふさがれず、身振り手振りで話ができるし、1番有利といえるでしょう。これは、空気を飲み込んで食道のなかにため、これを吐き出して声にするという方法です。ゲップの要領で声を作るわけです。道具を必要としないのが利点ですが、習得するには4カ月から12カ月かかるといわれ、長期間のトレーニングが必要となります。なかには残念ながらこれをマスターできない患者さんがいますし、高齢者には難しい場合もあります。

電気喉頭は、マイクのような機械をあごの下に当てて強制的に振動させることで声を作ります。そのため、機械を片手で持たなければいけません。特別なトレーニングを必要としないのが利点ですが、声が機械的でロボットのような一本調子になってしまいます。しかし、最近では声のトーンが下がるタイプも出てきており、機械の改良が進んでいます。

ボイスプロステーシスとは、喉頭摘出後、頸部の皮膚と気管を縫合して形成する新しい呼吸孔「永久気管孔」に留置するシリコン製のチューブのことを指します。このチューブで食道と気管をつなぎ、新しい空気の通り道を作るのが「気管食道シャント法」と呼ばれる発声法です。

永久気管孔を指でふさぐことによって肺の空気を咽頭に送り込んで声に変えて発声させるため、この方法も片手が使えなくなります。しかし、トレーニングはそれほど必要なく、気管孔を閉鎖する要領さえつかめれば発声することは可能です。

最近では新しいボイスプロステーシスが開発されており、気管孔を閉鎖することなく発声もできるようになってきています。このような器具も次第に多くの施設で導入されてきているので、担当の先生に相談してみることをお勧めします。

当院では、基本的には食道発声を勧めています。しかし、高齢者や、トレーニングしてもどうしても食道発声をマスターできない患者さんは電気喉頭に切り替えることもできます。

なお、喉頭摘出の手術を受けた場合は、身体障害者3級と認定されますので、電気喉頭の購入などについて役所で相談されるとよいでしょう。

声門がん=喉頭の内側を覆う粘膜(上皮)にできる喉頭がんの1種。(1)声帯に発生する声門がん、(2)声門より上に生じる声門上(じょう)がん、(3)声門より下に生じる声門下(か)がんの3種類に分けられ、そのうち7割を占めるのが(1)の声門がんである

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