抗がん剤治療で下咽頭がんが縮小。今後の治療法は?
2007年の5月に下咽頭がんと診断されました。がんは下咽頭にとどまっていて、転移はないと言われました。抗がん剤でがんを小さくしてから手術をすると言われていたのですが、思いのほか抗がん剤がよく効き、がんはかなり小さくなりました。そのため、手術は行わず、抗がん剤治療を続け、さらに放射線治療を追加することになりました。がんが小さくなったのなら、手術もそれほど大がかりでなくできるように思うのですが、やはり手術よりも抗がん剤治療と放射線治療のほうがよいのでしょうか。治る可能性が高く、声が失われず、副作用や後遺症がより少ない治療法を選びたいと思っています。
(香川県 男性 60歳)
A 手術もあるが、放射線治療を加えるのが一般的
下咽頭がんに抗がん剤治療がよく効いて、がんが小さくなることはしばしばあります。また、抗がん剤治療がよく効く人には、放射線治療も効果が出やすい傾向があります。ですからご相談者のような方には、一般的には放射線治療を追加されることをおすすめします。
放射線治療の主な副作用は、粘膜の炎症と唾液の分泌障害です。粘膜炎は治療が終わって1カ月ほどすると、多くの場合、治まります。唾液の分泌障害は、患者さんによっては長引くことがあります。
一方、抗がん剤治療の後に手術を行うこともあります。声を残す手術が可能かどうかは、もともとの(抗がん剤治療を行う前の)がんの広がり具合がどの程度であるかによります。それというのも、抗がん剤治療でがんが縮小しても、顕微鏡などで見ると、がんが残っていることがあるためです。一般的には、T分類のステージ(病期)でT2くらいまでであれば、声を残す手術をすることは可能です。
手術では、病変部などを切除した後に下咽頭を再建する手術も必要になることが多くあります。再建手術は、切除手術後に引き続き行われます。
手術の主な副作用で問題となる合併症は誤嚥です。切除範囲や切除部位によっては、食事や水分をとる際に、それらが気管に入って、せき込んでしまうことです。
また、そもそもご相談者のようなケースで手術を行う医療施設はまだ、少ないのが現状です。徐々に増えてはいますが、当センターや癌研有明病院などのがん専門施設、一部の大学病院などに限られています。
なお、抗がん剤治療だけで治る可能性がまったくないとは言いませんが、下咽頭がんを含めた固形腫瘍を抗がん剤治療だけで治すのは、今のところ、現実的ではありません。