声門がん3期。喉頭を全摘せずに、放射線治療はできないか?
何週間も声がかれる状態が続き、そのうち、のどが詰まる感じがして、息苦しさを感じるようになりました。病院に行き、検査を受けたところ、3期の声門がんと診断されました。手術で喉頭をすべて摘出すると言われましたが、声が出なくなるなど、後遺症が出ることがとても不安です。喉頭を摘出せずに放射線治療で治すことはできないでしょうか。また、手術で喉頭を取っても、リハビリをすれば、話せるようになると言われました。どんなリハビリを行うのでしょうか。
(埼玉県 男性 56歳)
A 喉頭全摘が標準治療。食道発声などの代用音声で話せるように
喉頭はのどぼとけにある呼吸器官の一部で、気管へ通じる空気の通り道になっています。喉頭には声帯があって、声帯を振動させることで声を出しています。また、喉頭には、食べ物が気管に入るのを防ぐ機能もあります。
喉頭がんは声帯にできる「声門がん」、声帯の上にできる「声門上がん」、声帯の下にできる「声帯下がん」の3つに分けられます。この中で最も発症数が多いのは声門がんで、喉頭がんのおよそ7割を占めます。
声門がんの3期では、声帯の固定(がんが浸潤して声帯が動かなくなること)が起きて、息苦しくなり、声がかれるなどの症状が出ることが多くあります。ご相談者も、おそらくそういう状態になっているのだと思います。
3期の声門がんの標準的な治療法は、喉頭を全摘出する手術です。放射線治療がまったく効かないわけではありませんが、3期ではがんの制御率がかなり下がるため、標準的な治療法とはいえません。ただ、まず放射線治療を行って、効果があればそのまま続け、効果が出ない時点で手術に切り替える方法もあります。
喉頭を全摘出すると、生理的な発声はできなくなります。生理的な発声をどうしても残したいのであれば、まず放射線治療を受けられるのも1つの選択です。最近では、放射線治療と抗がん剤を併用する治療も行われています。
喉頭を全摘出し、発声できなくなった場合は「代用音声」によって、話すことができるようになります。
代用音声には、「食道発声」「電気喉頭」「ボイスプロステーシス」「TEシャント法」の4つがあります。
ご相談者が「リハビリ」とおっしゃっているのは食道発声のことで、胃の中の空気を口腔内に移動することで声を出します。原理はゲップと同じなので、長いフレーズを話すことはなかなか難しいと思いますが、リハビリを重ねると、歌を歌えるほど上達する人もいます。
「銀鈴会」などの患者会による発声教室で、発声の具体的なリハビリを行っています。問い合わせされてみるとよいかもしれません。(東京都港区新橋5-7-13 ビュロー新橋901 TEL:03-3436-1820/2686 ホームページ)
電気喉頭は、マイクに似た器具をのどに当てて、電気的な振動を与え、同時に口を動かすことで発声します。器具を持つ手がふさがりますが、特別なトレーニングは必要ありません。電気喉頭と食道発声を状況によって使い分けることも可能です。
ボイスプロステーシスは、喉頭を全摘出した後に、人工弁を喉頭があった場所に取り付けて発声します。
TEシャント法は手術です。食道に空気を通りやすくすることで、発声できるようになります。