陽子線治療の適応条件は?

回答者:林 隆一
国立がん研究センター東病院 副院長・頭頸部外科科長
発行:2013年5月
更新:2013年11月

  

鼻づまりが続いていたので検査をしたところ、鼻腔がんと診断されました。転移はないそうです。かなり大掛かりな外科手術を要すると言われました。顔なので、できれば手術をしたくありません。インターネットで調べたところ、陽子線治療というものがあるそうですが、受けられるのでしょうか? また、費用に関しても教えてください。

(福岡県 女性 39歳)

A 陽子線は集約した照射が可能

陽子線は放射線の1種で、一般の放射線治療と比べ、病巣のみに効率よく線量を集中照射でき、副作用も少なくできる治療方法です

適応されるがん種には、原発性脳腫瘍や、肺がん、肝細胞がん、転移性肝がん、骨軟部肉腫、前立腺がんなどがあります。頭頸部がんでは、鼻腔がん、副鼻腔がん、上咽頭がん、眼窩腫瘍などが挙げられます。

鼻のがんの場合、眼球や視神経に放射線を照射しないといったことが大切になるため、線量を集約した形で照射される陽子線治療が効力を発揮すると考えます。

こちらの患者さんの場合、鼻腔がんで転移もないということで適応範囲となります。ただ、これらの適応条件も、腫瘍の組織型や部位、大きさによっては、陽子線治療が困難となる場合もあります。したがって、担当医と相談後、陽子線治療を行っている施設で、事前に適応判断を受けていただくことがよいかと思われます。

照射方法ですが、鼻腔がんの場合は1日1回(2.5GyE)、時間にして1回につき5~10分程度を約30回照射します。

陽子線治療は先進医療のため、公的医療保険の対象とはならず全額自己負担となります。当院では約288万円となります。

陽子線治療を受けられる施設は、他にも筑波大学陽子線医学利用研究センター、南東北がん陽子線治療センター、兵庫県立粒子線医療センター、静岡県立がんセンターなどいくつかあり、その数も徐々に増えてきています。治療実績を積み上げれば公的保険適応へとなる可能性もあるでしょう。

GyE=(Gray Equivalent :グレイイクイバレント) 重粒子線治療の照射量を表す単位

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