下咽頭がんが再発。放射線以外の治療法は?

回答者:林 隆一
国立がん研究センター東病院 頭頸部腫瘍科形成外科科長
発行:2011年12月
更新:2013年11月

  

4年前に2期(リンパ節転移なし)の下咽頭がんと診断され、放射線治療を受けました。治療はうまくいって、がんはいったん消えたのですが最近、局所再発したことがわかりました。とても悔しいです。担当医からは「1回目に放射線治療を行っているので、もう放射線は使えない」と告げられています。私は体に負担をかけたり、QOL(生活の質)を下げたりする治療は、なるべく受けたくありません。放射線治療以外であれば、どのような治療法がよいでしょうか。ご教示をお願いします。

(滋賀県 男性 65歳)

A 部分切除で声を残せることもある

放射線治療は体への負担が比較的少なく、声を失わずにすむなどQOLを保つのにも適しているので、下咽頭がんの治療でよく行われます。

しかし、担当医の言われたように、残念ながら放射線治療を再度受けることはほとんど不可能と考えてください。

放射線治療では、病巣とがんが広がっている恐れのある周辺組織に対して、体が耐えられるぎりぎりの強い放射線を照射します。治療効果を最大限追求するためです。そのため、放射線が当たった部位にもう1度、放射線を当てると、壊死や出血といった重大な障害が起こりかねません。

放射線治療後に再発した下咽頭がんの治療では手術が中心となります。がんの広がり方、転移の有無などによって、切除の仕方は変わってきますが、放射線治療後は嚥下(飲み込むこと)機能が低下しているので、誤嚥による肺炎や術後の合併症を避けるため、下咽頭・喉頭全摘出術を勧められることが多いでしょう。この場合、声を失ってしまうことになりますが、経口摂取は誤嚥の恐れなく行えることになります。

がんが小さくて、喉頭を温存して安全に切除できる場合は、希望すれば下咽頭部分切除術によって、発声機能を温存できることもあります。担当医とよくご相談されるといいでしょう。

がんが進行していて切除不能だったり、ほかの臓器に転移していたりした場合は、全身化学療法を行うことになります。

使う抗がん剤はシスプラチンと5-FUの併用が主流です。全身状態がよく、合併症がない場合は、これにタキソテールを併用することもよくあります。そのほうがより治療効果を期待できるからです。

声を失いたくないということで、全摘手術をどうしても避けたい場合、全身化学療法を選ぶという手もなきにしもあらずですが、治る可能性は手術より低いことを念頭に置いておきましょう。

誤嚥=飲み込んだ食物などが誤って気道内に入ってしまうこと シスプラチン=一般名 5-FU=一般名フルオロウラシル タキソテール=一般名ドセタキセル

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