上皮性卵巣がんの漿液性腺がんにドキシルは使えるか?

回答者:関口 勲
栃木県立がんセンター 婦人科医長
発行:2009年8月
更新:2013年12月

  

上皮性卵巣がんの漿液性腺がんで、手術を受けました。卵巣と子宮を摘出し、腹水も取り除きました。ステージ(病期)は、3C期と診断されました。手術後、抗がん剤治療を受けています。タキソール(一般名パクリタキセル)とパラプラチン(一般名カルボプラチン)の併用療法です。知人から、「最近、ドキシル(一般名ドキソルビシン塩酸塩リポソーム注射剤)という抗がん剤が使われるようになった」と聞きました。私のような場合、この抗がん剤は、どの程度の効果があるのでしょうか。この抗がん剤の使い方、副作用などについて教えてください。

(青森県 女性 52歳)

A タキソールまたはタキソテール、パラプラチンが無効な腫瘍が対象

漿液性腺がんは、卵巣がんの組織型の中では最も多いタイプです。腹膜播種がある3C期という状態で見つかることも多く、相談者は、典型的な卵巣がんのケースと言えます。

普通は、腹膜やリンパ節の腫瘍をできるだけ切除する腫瘍減量手術を行います。そうした手術後に、抗がん剤治療を行います。第1に選択される抗がん剤は、タキソールまたはタキソテール(一般名ドセタキセル)、パラプラチンです。腫瘍効果と安全性について、最も信頼のある抗がん剤です。一般的には、タキソールまたはタキソテールとパラプラチンの併用療法を、3~4週間置きに6コース行います。

しかしながら、これらの抗がん剤治療をしても、がんが完全になくならない場合があります。あるいは、腫瘍マーカーが正常化して、CT(コンピューター断層撮影装置)画像で見てもがんの存在がなくなって、いったんはがんが治ったかに見えたが、その後、再発することもあります。

再発が最終の抗がん剤治療から半年以上経過している場合、タキソールまたはタキソテール、パラプラチンが有効であったと判断し、もう一度、同様の抗がん剤治療が推奨されます。効果がある限り、続けます。

タキソールまたはタキソテール、パラプラチンの治療後にがんが残っているとか、あるいは最終の抗がん剤治療から半年以内の再発の場合、これらの抗がん剤はあまり有効ではなかったと考えられます。その場合は、抗がん剤を変更することが得策と考えられます。

タキソールまたはタキソテール、パラプラチンが無効な腫瘍に対して、選択される抗がん剤として、トポテシン/カンプト(一般名イリノテカン)や、ドキシルがあります。両者とも、2~3割の方に腫瘍の縮小効果が認められています。腫瘍の縮小が認められても、がんを根治するだけの効果はなく、これらの抗がん剤治療から期待できるのは腫瘍の増殖を抑えて延命することです。

ドキシルは、最近、日本でも使用可能となった抗がん剤です。タキソールやパラプラチンが登場する前によく使用されていた抗がん剤のアドリアシン(一般名ドキソルビシン)の体内での血中濃度が長くなるように工夫された薬です。ドキシルとトポテシン/カンプトの治療効果を比べた米国の臨床研究で、ドキシルのほうがわずかですが治療成績がよいことがわかりました。そこで、日本でもドキシルの使用が可能となったわけです。

ドキシルには心筋障害、手足に湿疹の出る手足症候群という副作用があります。とくに、手足症候群は、軽度のケースも含めると、半数以上に現れます。

また、注射による投与時に、発熱や、悪寒、頭痛などの独特な副作用があります。

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