良性の子宮内膜症性嚢腫と診断。手術法を迷っている

回答者:磯西 成治
東京慈恵会医科大学付属第3病院 産婦人科診療医長
発行:2005年10月
更新:2013年12月

  

貧血のため、近くの病院の内科を受診しました。血液検査を受けたところ、別の病院の婦人科を紹介され、その婦人科では、内診、血液検査、超音波検査、MRIを受けました。腫瘍マーカーのCA125は116、CA19-9は52で、それぞれ正常値を上回っています。画像を見ると、左右の卵巣にそれぞれ3~4センチの腫瘍が認められるそうです。自覚症状としては、下腹部の痛みがときどきあります。診断は、卵巣嚢腫の一種である子宮内膜症性嚢腫(チョコレート嚢腫)と言われました。悪性(卵巣がん)の可能性は非常に低いが、100パーセントではないそうです。治療は、開腹手術か腹腔鏡手術を勧められています。どの治療法がよいのでしょうか。手術を受ければ完治するでしょうか。また、がんの可能性はどの程度あるのでしょうか。

(東京都 女性 38歳)

A 悪性が疑われる場合、腹腔鏡は得策ではない

CA125の正常値は35(単位IU/ml)以下、CA19-9の正常値は37(単位U/ml)以下ですから、腫瘍マーカーは確かに正常値をかなり上回っています。

画像に関しては拝見していないのでコメントできませんが、最終的な診断は手術をして摘出した腫瘍の病理検査により決定します。ですから、超音波検査などの画像と腫瘍マーカーだけでは診断は確定しません。

悪性の卵巣腫瘍に対する手術は近年、腹腔鏡手術が頻繁に行われています。腹部の傷口が小さく、おなかを切らずにすむので、患者さんも腹腔鏡手術を選択される方が多くいらっしゃいます。

しかし、卵巣腫瘍の腹腔鏡手術には腹腔鏡特有の問題があります。

腹腔鏡では腹腔内で卵巣腫瘍の液体部分を吸引し、腫瘍体積を縮小した後、摘出術の操作が進みます。この吸引時、内容液が血液など粘稠性のある液体であれば、吸引自体容易ではありません。いずれにしても腹腔内に内容液が多少とも漏出する可能性を完全には防ぐことはできません。

悪性腫瘍の疑いが否定できない場合、前述の操作により悪性細胞は腹腔内全域に広がるため、仮に初期の卵巣がんだったとしても、この時点で一気に進行がんと同様の病態が形成されてしまいます。腹腔鏡は限られた良性疾患には重宝したいのですが、今回のように少しでも悪性が疑われる場合はお勧めしません。

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