低用量ピルを服用中。がんになるリスクと予防との兼ね合いは?
学生時代から生理痛がひどく、出血量も多かったため、婦人科で診察を受けたところ、子宮筋腫がいくつかできていました。生理痛の症状の改善のために低用量ピルを勧められ、現在服用中です。ところが、インターネットで「低用量ピル」を調べていたところ、「子宮体がんや卵巣がんになるリスクを下げることができる」とある一方で、子宮頸がんになりやすい人の条件の1つに「ピルを使っている人」とありました。低用量ピルを飲み続けていて、子宮頸がんになるリスクと、子宮体がん・卵巣がん予防の効果は、どちらが高いのでしょうか。低用量ピルをこのまま飲み続けていてよいのでしょうか。
(34歳 女性 高知県)
A 治癒率が低い卵巣がんに対する予防効果を評価すべき
婦人科腫瘍センター長の
上坊敏子さん
低用量ピル(以下、ピル)にはさまざまな種類がありますが、月経の周期を整えたり、月経量を減らしたり、月経痛を和らげたりする効果があります。避妊薬としてより、その副効果のために服用している人も多いのではないかと思います。
また、ピルを服用することで、卵巣がんと子宮体がんになるリスクは非常に下がります。
まず、卵巣がんについては、ピルの服用により発症のリスクを約30パーセント下げます。低下率は1年使用すると5パーセント、10年以上の使用で50パーセントに達します。この効果は、服用をやめても少なくとも20年継続します。
先進国では、この20年間に若い女性が卵巣がんになる頻度と死亡率が減少しています。また、ピルが早くから普及していた国ほど減少率は大きく、ピルの効果と考えられています。
子宮体がんについて、ピルは発症のリスクを約30パーセント下げます。服用期間とともにリスクは低下し、3年以上使用することにより50パーセント、10年以上の服用では80パーセント低下します。ピルをやめても、その効果は少なくとも20年継続します。
一方、子宮頸がんについてはどうでしょうか。現在ピルを服用中の女性では、服用期間が長いほど子宮頸がん発症のリスクは高くなります。ピルの服用を中止すると発症のリスクは下がり、中止してから10年以上たつと服用していない人と同じになります。
ピルを飲んでいると、コンドームを使用しないで性行為をする可能性が高くなるため、子宮頸がんになるリスクが高くなるのではないかといわれています。また、ホルモンがヒトパピローマウイルスを活性化させているのかもしれないという意見もあります。
子宮頸がんはがん検診をきちんと受けていれば、がんになる前の早期に発見して治療できます。一方、卵巣がんは発見が難しく、治療も大変で時間もお金もかかるわりに治癒率は低く、助からないケースもあります。そのことを天秤にかければ、ピルを飲むと多少子宮頸がんになるリスクが高くなるとしても、卵巣がんを予防できるメリットは大きいといえます。
子宮筋腫はピルを飲むことで少し大きくなるかもしれませんが、過多月経や月経痛といった症状は治まると思います。症状と相談しながらピルを使うことをお勧めします。
以上を総合して考えると、ピルを飲むことのメリットは大変大きいといえます。
なお、子宮頸がんになる大きな要因の1つは喫煙です。喫煙は絶対にやめましょう。また、子宮頸がん検診さえ受けていれば、子宮頸がんは早い段階で見つけて治療できますから怖い病気ではありません。検診は必ず受けてください。