卵巣がんの遺伝に不安

回答者:上坊 敏子
社会保険相模野病院 婦人科腫瘍センター長
発行:2011年8月
更新:2013年12月

  

母が卵巣がんにかかり、現在も治療中です。最近「卵巣がんは遺伝する」という話を聞いて、とても不安です。遺伝で卵巣がんになりやすいかどうかを調べるにはどうすればよいのでしょうか。また、もし卵巣がんになる可能性が高い場合、どのような頻度でどんな検診をしたらよいのでしょうか?

(岡山県 女性 37歳)

A 10%が遺伝性。年齢と状況をみて対策を

遺伝による卵巣がんは、卵巣がん全体の約10パーセントといわれています。卵巣がんの遺伝には、BRCA1、BRCA2という特殊な遺伝子が関係している場合が多いといわれています。

1親等に卵巣がんの方がいらっしゃる場合、卵巣がんになるリスクは3.6倍、2親等では2.9倍です。2親等以内に卵巣がんの方がいらっしゃったら70歳までに卵巣がんになる可能性は50パーセントという報告もあります。

また、卵巣がんだけでなく、乳がん卵巣がん家系もあります。親族の中に、卵巣がんや乳がんの方が多くいらっしゃる場合、遺伝の可能性があるといえます。

このほかに、リンチ症候群(遺伝性非ポリポーシス性大腸がん)といって、大腸がんや子宮体がん、卵巣がん、肝胆道系がんなど、さまざまな臓器にがんの発症リスクが高まる疾患もあります。

こういったがんの遺伝性を調べるには、家系図を書いてみて病院で見てもらいます。家系の中に、何人がん患者さんがいるのか、またその方は本人とどのくらい血縁が近いかを見ることで遺伝の可能性が高いかを判断することができます。遺伝子検査もありますが、行っているのは国内でも限られた施設でのみです。

相談者の方は、家系の中にどのくらいがん患者さんがいるのかわかりませんが、お母様だけというようでしたら遺伝性とは判断がつきにくいです。

検診についてですが、卵巣がんは子宮頸がんのように無症状のうちから検診すれば早期に見つかるというようながんではありません。卵巣がんの診断には、主に画像検査と腫瘍マーカーが使われますが、腫瘍マーカーが上がっていない場合も少なくありません。また画像診断でも、3カ月前までは正常だったのに、すでに進行がんになって見つかる場合もあります。

卵巣がんは有効な検診方法も、検診を行う間隔も定かではないという、やっかいながんなので、もし遺伝性であることがわかった場合は卵巣の摘出が選択肢として挙げられます。すでに出産され、今後出産の予定がなければ卵巣の摘出も考慮に入れてよいと思います。ですがまだ出産していなくて年齢も若い場合は、卵巣がん予防に有効である低用量ピルの服用がすすめられます。家系に卵巣がんの方が多い場合は、1度病院に相談されるといいでしょう。

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