前立腺がんとPSA値の関係はあるのか

回答者●古賀文隆
がん・感染症センター都立駒込病院腎泌尿器外科部長
発行:2023年11月
更新:2023年11月

  

最近、線虫でがん検査という広告をよく見るようになり、興味を持っていましたが、この検査はほとんど意味がないとある学会で発表されたと聞きました。また腫瘍マーカーもそれ程の信頼性はないとも聞きます。前立腺がんの指標であるPSA値もその日の体調によって上下するので信頼度は低いという友人もいます。PSA値と前立腺がんとの関係は本当にあるのでしょうか。PSA値がどこまで上がっていれば間違いなくがんだと判定されるのでしょうか。

(58歳 男性 東京都)

PSA値は万能ではないが

がん・感染症センター都立駒込病院
腎泌尿器外科部長の古賀文隆さん

PSA値は前立腺がんの拡がり(病期またはステージ)と相関すること、また治療に伴う前立腺がんの病状経過反映することから、前立腺がんの腫瘍マーカーとして世界中で用いられています。前立腺がんの診断においてもPSA値が高いほど前立腺がんの診断率が高まる事実から、前立腺がん検診では、通常PSA値4ng/mLを基準値として「要精密検査」と判断されます。

相談者がご指摘されるように、前立腺がん診断においてPSA値は万能ではありません。がんではなく、炎症や前立腺肥大症が原因でPSA値が基準値を超えて高くなることがあるため、PSA値のみで前立腺がんを診断することはできません。そこでPSA高値の場合は2次検査としてMRIによる画像診断を行います。MRIで前立腺の性状を評価し、がんの疑いがあれば前立腺針生検が推奨され、生検組織の病理検査によって最終的に前立腺がんと診断されます。

高性能なMRIの普及によって早期前立腺がんの診断精度は向上し、無駄な前立腺針生検(がんの診断に至らない生検)や過剰診断(治療を必要としない悪性度の低い前立腺がんの検出)は確実に減少しています。

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