PSA値が0.4までは様子見でいいと言われているが
4年前に前立腺全摘術を受けました。手術前のPSA値は12でグリソンスコアは7でした。術後1カ月のPSA値は0.075、3カ月後は0.005でした。ところが昨年(2023年)3月にPSA値が0.2、9カ月後には0.28と徐々に上昇しています。PSA値0.2が再発の基準と定められているそうですが、主治医からは「0.4までは様子見でよい」と言われていますがどうなのでしょうか。また、再発の場合、どのような治療法があるのでしょうか。
(65歳 男性 京都府)
A 局所再発の場合、PSA値が低いほうが放射線治療の効果が高い
腎泌尿器外科部長の古賀文隆さん
前立腺全摘除術後のPSA再発に対する治療は再発部位に応じて異なります。前立腺床(元々前立腺が存在した部位)の局所再発の場合は救済放射線治療(男性ホルモン除去療法を併用する場合あり)を、転移再発の場合は男性ホルモン除去療法をベースに転移再発病巣に対する放射線治療を考慮します。術後PSA再発の診断上の問題点は、PSAが0.2ng/mLを超えた時点でCT、MRI、骨シンチグラムなどの通常の画像診断を行っても殆どのケースで再発病巣を見つけることができないことです。
そのため、全摘標本の病理所見や術後のPSA倍加時間(PSAが倍になるのにかかる時間)などを参考に、局所再発と転移再発のどちらの可能性が高いかを判断し、治療法を選択することになります。たとえば、全摘病理で切除断端陽性のグリソンスコアが低めのがん(7以下)でPSA倍加時間が長い場合は局所再発の可能性が高く、精嚢浸潤があるグリソンスコアの高い(8以上)局所進行がんでPSA倍加時間が短い(3カ月未満など)場合は骨転移の可能性が高いと言えます。
相談者の場合、PSA倍加時間も比較的長いようなので局所再発の可能性が高いと思います。局所再発に対する救済放射線治療では、治療開始時PSA値が低いほうが良好な治療効果を期待できます。PSAが0.5ng/mLを超えると治療効果が低減するとの報告があり、そのため主治医はPSAが0.4ng/mL となるまで経過観察を提案しているのかもしれません。
近年、前立腺がん細胞を特異的に標識し現行の画像診断より精度が高いPSMA-PETという画像検査法が開発され、欧米では術後PSA再発の局在診断(再発がんが存在する部位を特定すること)に用いられています。
本邦では保険診療で実施することができませんが、保険外診療で実施できる施設もあるようです。PSA値が低い段階ではPSMA-PETでも必ずしも検出率は高くありませんが、もし局在診断ができれば再発病変を標的とした確実な治療が可能となります。