術後の後遺症が不安

回答者:杉谷 巌
がん研有明病院 頭頸科副部長
発行:2011年1月
更新:2013年10月

  

甲状腺乳頭がんの2期と診断されました。甲状腺を全摘する必要があるとのことです。甲状腺を取ってしまうと、ホルモンの関係で口や手がしびれたりすることがあると聞きました。とても不安です。

(青森県 56歳 女性)

A 手や口のしびれは副甲状腺機能低下の症状

副甲状腺は甲状腺の裏側の上下左右にくっついている(通常4個)米粒大の臓器で、副甲状腺ホルモンを分泌しています。副甲状腺ホルモンは、血液中のカルシウム濃度をコントロールしています。甲状腺を全摘する際に、副甲状腺も全部取ってしまうと、副甲状腺の機能が低下し、血液中のカルシウム濃度が下がることによって口周辺や手足の先がしびれ、ひどいときには手足のけいれんが起こる、テタニーと呼ばれる症状が起こることがあります。

ですが、甲状腺を全摘すればテタニー症状が起こるかもしれないということはわかっているので、あらかじめ予防策が行われますので、心配はいりません。

テタニー症状を予防するためには、甲状腺全摘手術後に血液中の副甲状腺ホルモンやカルシウムの数値を調べ、必要に応じてカルシウムやビタミンDを投与し、その補充を行います。

基本的には手術の翌日に数値を調べ、こういった補充の治療を行いますが、テタニーの症状を出さないために、手術直後から予防的にカルシウムやビタミンDを投与しておく場合もあります。

また、甲状腺手術の経験が豊富な病院なら手術の際に、副甲状腺を付けて残したり、いったん切除した副甲状腺を血流の良い周辺の筋肉内に植え込むなどして、副甲状腺の機能を残すような方法を用いるので、たとえ一時的にカルシウムとビタミンDの補充が必要となったとしても、ひと月もすれば不要になる場合が多いです。

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