甲状腺未分化がんの治療法はあるか
66歳の母のことでご相談です。最近、首にできたしこりが急激に大きくなって、声が出にくくなりました。食事をするときも、食べ物が通りにくくなったと言い、呼吸も苦しそうです。病院で検査を受けたところ、甲状腺がんの中の未分化がんという種類のものとのこと。甲状腺にできたしこりが反回神経(声帯を動かす神経)や気管、食道に浸潤し、首のリンパ節のほか、肺にも転移しているとのことです。どんな治療を受けたらよいのでしょうか。
(徳島県 39歳 女性)
A 手術できる場合、放射線や抗がん剤の治療も検討
甲状腺未分化がんは、甲状腺がん全体の1~2パーセント程度の珍しいがんですが、性質が悪いことで知られています。診断後の1年生存率は10~20パーセントで、多くの方が半年以内に亡くなってしまいます。
未分化がんは、知らずに持っていたおとなしい甲状腺腫瘍が突然変異して生じることがあるといわれています。また、乳頭がんなどが再発を繰り返すうちに、未分化がんになることもあります。
ご相談者のお母さんのように、首にできたしこりが急激に大きくなって、周囲の臓器への浸潤のため、声が出ない、ものが食べられない、呼吸が苦しいなどの強い自覚症状があることが多いです。痛みが出ることもあります。肺など全身への転移を伴うことも多いがんです。
運良くがんがそれほど広がっていなくて手術ができる場合には、腫瘍を取り除いたうえで、放射線治療や抗がん剤治療を行うことで、比較的長期間、元気に過ごせることもあります。
しかし、「標準的」といえるような確立した治療法はまだありません。浸潤や転移が激しい場合には、副作用の強い無理な治療は行わずに、当初から緩和ケアの医師にも参加してもらい、呼吸困難や疼痛などの苦痛を取り除くことに主眼を置いた治療を勧めざるを得ない場合もあります。