小さな手術を希望。どのような手術方法を選んだらよいか

回答者:杉谷 巌
がん研有明病院 頭頸科副部長
発行:2008年11月
更新:2013年10月

  

最近、病院の検査で、甲状腺乳頭がんと診断されました。腫瘤の最大径は1.5センチほどで、手術を勧められています。自分なりに資料を集めて調べてみると、手術方法には、甲状腺をすべて切除する方法と、甲状腺の1部だけを切除する方法とがあるようです。できれば手術は小さくと思っていますが、再発のことが気になります。私の場合、どのような手術方法を選んだらよいのでしょう。

(滋賀県 51歳 女性)

A 治療の中心は手術。手術方針には2つの異なる考え方がある

ご相談者のような低危険度群乳頭がんの治療の中心は手術ですが、その手術方針には2つの異なる考え方があります。1つは、主に日本で発展してきた考え方で、甲状腺の切除は手術前に超音波検査で調べたがんの広がりに応じて、できるだけ正常の甲状腺は温存するように行い、術後補助療法はなるべく行わないとするものです。

もう1つは、欧米で主流の考え方で、すべての乳頭がん患者さんに対して、甲状腺全摘手術を行い、さらに手術後、補助療法として放射線ヨード療法による転移の診断・治療を行って、生涯、甲状腺ホルモン剤によるホルモン療法を行うというものです。

低危険度の乳頭がんは生命を脅かす危険がほとんどないと予測されるがんですから、当科は、これまで前者の甲状腺温存手術を基本的な方針としてきました。その結果、10年生存率は99パーセント以上で、温存した甲状腺への再発は1.4パーセント、肺などへの遠隔再発1.2パーセント、リンパ節再発7.2パーセントでした。生存率は欧米式と変わりません。当科ではこれら2つの治療方針について説明し、治療方針を決めるようにしています。

甲状腺温存治療を希望される患者さんは84パーセントで、欧米式は4パーセント、医師にお任せが12パーセントです。医師と十分に話し合って決めてください。

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